阪神・四藤慶一郎球団社長(55)は15日、巨人同様、練習中のノックや円陣での「声出し」に絡んで虎ナインの間でも金銭のやりとりがあったことを明らかにした。その“発表”の場は27年ぶりにタテジマ完全復帰の掛布雅之二軍監督(60)の船出となる中日とのウエスタン・リーグ開幕戦が行われた鳴尾浜球場で、この球団社長発言を受け、テレビ局の情報番組クルーまで大挙押しかける異常事態。元巨人・笠原氏の「金銭ノック告発」に端を発しただけにチーム内から複雑な怒りの声も飛び出すなど、重苦しいムードとなった。

 この日は“ミスタータイガース”掛布二軍監督の初陣となる記念すべき開幕試合。坂井オーナーも観戦に訪れ、球場入り口ではファンに配布する掛布二軍監督の直筆サイン入り名刺500枚、ポスター100枚があっという間になくなるなど、観衆は満員の500人で警備員を4人に増員し、二軍では異例の入場制限まで断行した。試合は2―9と完敗し、現役時代と同じくユニホームのソックスに日付と名前を書き込むゲン担ぎで臨んだ掛布二軍監督は「悔しいのは悔しいが、選手が全力疾走してるのを見て次につながると思った。勝つに越したことないけど負けのスタートでも良かった」と話したが、そんなメモリアルな日に「賭博問題」で阪神も揺れることになった。

 試合前、観戦にやってきた四藤球団社長が巨人と同じノックや野手による円陣での「声出し」に絡んでの金銭のやりとりが阪神でも5年前からあったことを明かした。試合前の円陣で「声出し役」を務めた選手に対し、チームが3連勝の場合から「ご祝儀」として野手一人5000円ずつを出し合い、4連勝以降も5000円ずつを集めていた。また、試合前のシートノックでもミスした選手が1度につき500円の罰金を支払い、積み立てて選手の食事会等の費用にあてていたという。これらの案件について四藤社長はNPBにも報告し、野球協約に抵触しないことを確認した上で「こういうことが賭博行為につながりかねない。すでに金銭のやりとりは一切やめようと(選手らに)話した」とコメント。倫理面での問題から「これから開幕だというのに残念。襟を正してやっていくしかない」と話した。球場には普段は取材に来ないテレビ局の情報番組クルーまでが大挙、押しかけ、球団広報は対応に大慌て。結果的に“掛布フィーバー”に水を差す格好となった。掛布二軍監督は「僕らの時代はやったことがない。分かりませんね」と言葉少なだったが、ある球団関係者はこう憤った。「これも笠原がぺらぺらとしゃべったおかげ。こう言ったらダメかもしれないが、迷惑な話。今後は例えばウチや他球団でも出している試合での報奨金はどうなんだ、という話になる。そうなれば選手もモチベーションが下がるかもしれない」

 まさに重苦しいムード。開幕に向けて虎もまた“暗雲”に包まれてしまったのは確かだ。