巨人の野球賭博問題で大揺れとなる中、巨人取材歴28年の大ベテラン記者が重大指摘を放った。巨人はどうしてこうなってしまったのか。本紙コラム「赤ペン!」でおなじみの赤坂英一氏は“そもそもの元凶”として、原辰徳前監督の「1億円スキャンダル」に代表される、球団の隠蔽体質に問題があるとズバリ。巨人の今後を憂えた。

 今後、また野球賭博に関わっている選手が発覚したら、巨人はどうするつもりなのか。高木京介を賭博に関与させた笠原将生元投手、飲食店経営者のB氏は巨人側の調査に協力しておらず、彼らがほかの選手にも誘いをかけている可能性は否定できない。現に、ツイッターでB氏のものと見られるアカウントとつながっている選手もいる。


 事件発覚後、NPBはB氏を野球賭博常習者と認定し、熊崎コミッショナーも全容解明に向けて不退転の決意を示した。事態がここまで拡大したからには、巨人もNPB任せにしている場合ではない。自ら徹底的な調査を行っていると信じたいが、どこまで核心に迫ることができるか、疑問に思うファンも少なくないだろう。このような反社会勢力の関与が疑われる事件が起こるたび、いつの間にか“灰色決着”で済まされてきたからだ。


 最近の例で言えば、2012年に発覚した原前監督の“1億円スキャンダル”である。原前監督は06年8月、1988年ごろ不倫の関係にあった女性の日記の一部を見せられ、「これを表に出さないようにするにはカネがいる」と告げられた。この要求に応じて現金で1億円を払ったことが、週刊文春の記事によって明るみに出た一件だ。


 原前監督をゆすったとされるグループには野球賭博常習者もいた。05年にインターネットで野球賭博を開帳、大阪府警に逮捕されたことも文春に報じられている。


 ところが、巨人はこのとき、独自に調査をした上で、原前監督は1億円を要求した相手を反社会勢力だと認識していなかった(そのときは暴力団関係者ではなかった)、従って、恐喝されたとは考えていなかったなどと釈明。警察には被害届を出すことなく、週刊文春を名誉毀損で提訴する、と発表したのである。


 当時、原前監督は選手に謝罪した際、「球団は再発防止に動いてくれている。われわれを正しく導いて、守ってくれる。これからは巨人軍の一員として報告の義務をきちんと果たしてほしい」と話した。このとき、高木京と松本竜也元投手は1年目、笠原元投手は4年目、福田聡志元投手は7年目だった。あれから2年間、彼ら4人が陰で何をしていたかは、すでに明らかになった通りだ。


 今回の事態は、巨人による積年の“臭い物にはフタ”式の対応が招いた結果だとも言える。久保球団社長の「ウミを出し切れてなかった」というセリフも、2度目は世間に通用しない。巨人だけでなく、プロ野球全体の社会的信用が地に落ちてしまう。改めて、巨人には毅然とした態度と徹底的な調査を望みたい。
 (赤坂英一)