“大人の”澤村 新投法で8回3安打

2012年10月29日 11時00分

澤村はお立ち台で「明後日も勝つ!」

 巨人の若き右腕が日本一を目指す大一番で見事な投球を披露した。今年のプロ野球の頂点をかけた日本シリーズの第2戦が28日、東京ドームで行われ、前年の新人王・澤村拓一投手(24)が先発。初回は1イニング2死球と制球に苦しんだが、阿部慎之助捕手(33)にポカリとやられて立ち直り、その後は制球重視の新投法で相手打線をほんろう。武田勝投手(34)との投げ合いを制した。チームはこれで2連勝。最高の形で敵地札幌ドームに乗り込み、そのまま北の大地で日本一の座をつかみ取る——。

 阿部はマウンドに向かうと「しっかりしろよ」と一喝。さらに澤村の頭をポカリとやった。日本シリーズではめったにない光景が繰り広げられたのは、試合が始まってまもなくのことだった。

 初回。先頭の陽に死球を与えると、さらに二死二塁で迎えた4番・中田にも死球。一、二塁として稲葉へ2球目を投げる直前だった。ベンチからけん制のサインが出たのか、坂本が二塁に入る。だが澤村は信じられないことに、その動きに目線を送っただけで、すぐに投球動作に入ろうとしたのだ。

 澤村といえば、一つのことに入り込んで周りが見えなくなることがしばしば。シーズン中も、マウンドで一喝される光景は珍しくなかった。今回もしかり。しかもワンプレーで流れが変わりかねない短期決戦。阿部は澤村が打者との対決に“前のめり”状態でいると察知。目を覚まさせるために、一撃を食らわせたのだ。これで冷静さを取り戻したか、稲葉を外角スライダーで打ち取ると、その後はしっかり打者を抑え込んだ。中1日で1イニングを投げた22日のCSファイナルステージ第6戦から中5日という不安定な登板間隔でマウンドに上がった澤村。川口投手総合コーチは「球数の多い投手だけに走者を出すリスクはある」と危惧していた。下手すれば短いイニングで大量失点の危険性すらはらんでいた。それでも「ただ、今の澤村にはそこを乗り切るだけの精神力がある」。

 CSファイナルステージ第4戦では、3連敗と絶体絶命で先発し6回無失点に抑えた。その時に見せた心の力を信じていた。 精神力だけではない。要所以外は140キロ台前半、制球力を重視した“新投法”を披露。150キロ台を連発し、打者一巡した頃に速度が落ちて打ち込まれるという、これまでの悪循環がなくなった。これをナインの一人はこう語った。「絶対負けられないという気持ちが(投球スタイルを)変えたんですよ。確かに全力では投げていないですからね」。誰がなんと言おうと考え方を曲げなかった男は、絶体絶命のピンチに直面したときに「覚醒」した。

 6回には、自ら二塁打で出塁。気合のガッツポーズを塁上で見せた。もはや、自分の世界に入り込んだ姿はもうない。チームのために投げる“大人の”澤村がそこにはいた。

 武田勝とのタフな投げ合いを制し2連勝、最高の形で札幌に乗り込むことになった。打撃戦も制せば、投手戦も制する。今の巨人にはもはや敵地も何も関係ない。