本紙専属評論家の伊原春樹氏がオリックスの宮崎キャンプを視察。監督代行から一軍監督に昇格した福良淳一監督(55)とじっくり話し合った。昨季は優勝候補に挙げられながら5位に終わったチームは変わったのか。伊原氏のジャッジは……。

【伊原春樹 新・鬼の手帳】今年、オリックスの監督に就任した福良監督は巨人の高橋由伸監督と驚くほど似たようなことを言っていた。正式に監督になった時、どんな気持ちだったと聞いたら「やったるでと思った」と返してきた。

 キャンプを控えた1月31日に宿舎での全体ミーティングでこう言ったという。「チームのため、監督のためというのはやめてくれ。個々の、自分のためにやってくれ。結婚していたら奥さんのため、家庭のため、恋人のため、そして自分自身のためにやってくれ」。これは由伸監督と全く一緒だ。

 代行の時に「隙のない機動力野球」をやりたいと言っていたが、今もその気持ちには変わりがない。私が初めて西武の監督に就任した2002年、選手に言ったのは「当たり前のことを当たり前にやればいい」。隙のない野球ってそういうことなんだ。だから「まねすんな」って突っ込んだら、福良監督は「でも、そういうことじゃないですか」と自信に満ちあふれていた。

 シーズンに向けて福良監督の一番の心配は遊撃だろう。潰瘍性大腸炎で正遊撃手・安達了一はシーズン序盤の復帰が厳しいようだ。だから私は「思い切ってドラフト3位の大城(滉二=22、立教大)を使ったらどうだ?」と聞いた。しかし「守備がまだ不安」と言う。

 困った時は中島裕之を考えているようだ。彼は去年よりも体が締まっている。ただ、中島はレギュラーではなくてあくまでも困った時。そこでもう一度、大城を推すと「キャンプで守備が上達したら考える」と含みを持たせたから、大城の開幕スタメンの可能性は大いにある。

 昨季は大型補強の失敗だなんて言われた。ケガ人が多くて開幕に全員揃わなかったのが痛かったが、成績が残せなかったらそれは失敗となる。毎年どのチームも、ケガ人をどれだけ抑えられるかが勝負だから。

 ただ、今年の福良監督を支えるコーチングスタッフはおもしろい。高橋慶彦打撃コーチは個性がある。加えて経験もあるし、厳しさもある。あとは福良監督と社会人から一緒だったヘッドコーチ・西村徳文の存在も大きい(西村コーチは81年のドラフト5位で鹿児島鉄道管理局からロッテに入団。福良監督は84年のドラフト6位で大分鉄道管理局から阪急に入団)。西村はロッテで監督も経験しているし、それもあって今のところキャンプの雰囲気はいいんじゃないか。

 コーチ同士が和気あいあいとやっていたらダメだけど、監督にとって気心の知れたコーチが周りにいるのはいいこと。そういう雰囲気は選手も敏感に察知するものだ。私は期待しているし、最低でもクライマックスシリーズには行ってほしい。