【赤坂英一「赤ペン!」】広島の日南キャンプ、私が最も目を引かれたのは石井打撃コーチによる堂林のマンツーマン指導である。バットをナタのように振り下ろさせたかと思えば、剣道の試合で胴を打つかのように真横に回転させたり。右方向へ鋭い打球を連発させたかと思えば、豪快に引っ張らせて特大のフライを打ち上げさせたり。さらにグラウンド上でのレクチャーが延々30分近く続いたこともあった。

 夜6時前までじっくりと練習を見たあと、石井コーチに単刀直入に質問した。いったい堂林に何を教えているのか。石井コーチから返ってきたのはこんな答えである。

「それはまだお話しできません。いまは改めて一からバッティングを組み立てているところ。堂林とやっていることが完成に近づいたら、いまとは変わった打ち方になっているでしょう。キチッとした形になるまで、コメントは控えておきます。ぼくらも背水の陣でやってることですからね」

 というわけで、具体的な中身は明かしてもらえなかったが、堂林の打撃を根本的に変える特訓が進んでいることは確か。石井コーチは昨秋のキャンプで、「おまえをいったんぶっ壊す!」と堂林に宣言。大胆なフォーム改造をスタートし、落合博満ばりの“神主打法”に変えたと報じられた。

 だが、「それは違う」と石井コーチは言う。

「あれは秋しかできない練習をやっただけです。あくまで一時的なものであって、最終的な完成形は神主打法とはまるで違う形になる。このオフも、堂林は自分のフォームの動画を撮り、それをぼくに送ってもらって、ぼくがチェックしてました。それがどういう形になるかは、キャンプが終わるまで待ってください」

 広島は今季、前中日のルナが4番を打つと見られる。が、左ヒザや右ヒジに古傷を抱えており、シーズン途中に一時帰国したこともあった。新外国人プライディは未知数で、来日5年目のエルドレッドは調子の波が激しい。そうかといって、39歳の新井に今年も4番を任せられるかどうかはわからない。

 そんな状況で堂林が新打法に開眼すれば、新4番候補に浮上する可能性もある。前田がメジャーに去り、“マエケン・ロス”が懸念される人気面でもまたとない起爆剤になるはず。私としては堂林が新4番に育つことを期待したい。あくまで個人的な願望としてですが。