いよいよ球春到来だ。3月25日のセ・パ同時開幕へ向け、プロ野球の12球団が一斉にキャンプインした。冷たい風が吹く曇り空宮崎、沖縄の「国内組」は初日からあいにくの雨にたたられた球団が多かった。米国・アリゾナ州で29年ぶりの海外キャンプとなった日本ハムも冷たい風が吹く曇り空での始動となった。なかには大誤算のスタートとなってしまった球団もあったようで…。

 巨人の宮崎キャンプでは、高橋由伸監督(40)と2年ぶりに臨時コーチに就任した松井秀喜氏(41)の関係を巡る思わぬ“問題”が浮上し、周囲は大いに戸惑っている。練習は木の花ドーム(室内練習場)で午前10時に開始。ここで松井臨時コーチが合流し、由伸監督との久々の豪華ツーショットが実現した。

 ただこの日は、全体練習終了後に松井氏が片岡に少し助言を送った程度で、2人とも間近で選手を指導する姿はほとんどなし。若手注目株の岡本や和田、ルーキーの桜井俊貴(22=立命大)らへの“熱血レッスン”を期待する周囲は少々拍子抜けしたが、実はこれは由伸監督自身も望んでいない想定外の事態だった。

 指揮官はこの日、桜井のブルペン投球を離れてチェックしたことに「本当は近くで見たかったけど、本人のペースを乱したくなかった」。あえて一歩引き、選手と距離を置こうとしている。

 ただ“コーチ”の松井氏には「できるだけ全員に声をかけてもらいたいし、遠慮せずにどんどん教えてもらいたい」と、自分とは逆のスタンスで選手に接してほしいと願っている。だが、一方の松井氏も“気配りの人”だけに、スタンスは由伸監督と同じだった。

 松井氏の根底にあるのは、コーチである自分が監督より前面に出るのはおかしいという思い。指導のポイントについても「ないです。それは監督の中であるでしょう」とした上で「私(の仕事)はあくまでもチームのサポート。選手の個々のレベルアップにつながり、それがチームの力、監督の力になってくれれば」と語り、後輩の由伸監督を黒子として支えることが役目だと強調した。つまり、由伸監督と松井氏の間で選手への指導を“譲り合う”という困った事態が起きたというわけ。こんな状況が続けば、せっかく松井氏を臨時コーチに招いた効果も半減してしまう。

 球団スタッフは「自分が目立ちたくないという思いはあるだろうが、今回は先輩の松井に折れてもらうしかない。彼が積極的に選手に近付いてくれれば、後輩の由伸監督も動きやすくなるはず」と“どうぞどうぞ”の状況打破を期待するが…。