巨人が“世界戦略”の見直しを進めている。18日、球団編成部門トップの堤辰佳GM(50)が、極秘にドミニカ共和国入りしていたことが分かった。わざわざ球団幹部がラテンの島国まで足を運んだ目的は、将来有望な選手獲得のための現地有力者とのパイプ構築。ただし、同国との関係というと真っ先に思い浮かぶのは、あのライバル球団の方だが――。

 スタッフ会議翌日の16日、キャンプへ向けた準備作業を片付けた堤GMは、休む間もなくドミニカ共和国へ向け飛び立っていた。

 今季の巨人はすでに育成契約を含め9人の外国人選手を抱えている。関係者によれば、今回の視察では数人の選手調査を行う予定はあるものの、緊急補強をにらんだ動きではなく「あくまで現地の球界有力者や選手事情に精通した関係者との接触、ホットライン構築が目的」という。

 ここ数年の巨人は従来のメジャー出身選手に加え、日本への選手移籍を解禁したキューバとの関係を重視し、同国選手の獲得を進めてきた。だがキューバは米国と国交回復の動きがある上、国際大会や現地リーグとの兼ね合いでシーズンを通した出場が望みにくい事情もあった。

 昨秋以降“中南米ルート”の見直しに着手した球団は、国際部スタッフを各国に飛ばし、スカウティング状況を調査させた。そうしたなかでドミニカ共和国に着目したのは、昨季の反省からでもある。スカウトの1人は「ドミニカ(共和国)は近年素晴らしい選手を輩出している国だが、これまでウチは現地調査で後れを取ってきた。去年フランシスコのような選手をつかんでしまったのも、それと無関係ではない」と分析する。

 ただ、巨人スカウトも「後れを取っている」と認めるように、ドミニカ共和国球界とのパイプ構築は、強力なライバルの存在抜きに語れない。同国での先駆者といえば、かつては広島だったが、近年は中日が先頭を走る。昨年末も同国関係者と太いパイプを持つ森ヘッドコーチが3年連続で現地入り。ハイメ、ジョーダンらを獲得し、エルナンデス、ナニータ、バルデスを加え、今季は5人の同国がらみの選手(バルデスはキューバ出身だがドミニカ共和国でもプレー)を抱える。

 過去にはブランコ(オリックス)、ルナ(広島)らを発掘するなど、森ヘッドの目には定評がある。巨人がフランシスコを獲得した際に「あんなの獲らねーよ」と言い放ったのも、現地から性格や素行に関する情報を手にしていたからだともっぱらだった。

 そんな“中日の土俵”に、いまさら巨人が割って入るのは、簡単なことではない。だからこそ今回は本気度を示すために、編成部門の責任者である堤GM自ら現地入りしたというわけなのだが…。今後はドミニカ共和国を巡る巨人と中日の覇権争いからも目が離せない。