【大下剛史・熱血球論:年末集中連載(3)】就任1年目となった今季の広島・緒方監督は、選手に対してずいぶんと遠慮していたように見えた。特にエースの前田には球数や登板間隔を必要以上に気遣っていたように思う。選手への気配りは大切なことだが、自分のしたい野球を前面に打ち出すことができていなかった印象だ。

 2年目となる来季は年齢も1つしか違わない高ヘッドコーチが参謀を務める。プロ入り時の担当スカウトも同じで気心も知れており、緒方監督にとってもやりやすくなることだろう。

 プロは結果がすべて。今季のBクラス転落には責任も感じているだろうし、2年目とはいえ来季は野球生命をかけて戦うシーズンとなる。失敗は許されない。となれば、あとは何をするかだ。

 広島が最後にリーグ制覇した1991年は、緒方監督にとってプロ5年目のシーズンだった。いかにして優勝までたどり着いたかを目の当たりにしている。いみじくも8年ぶりに古巣復帰した黒田と新井はチームの変貌ぶりに驚いていたが、同じことは緒方監督も感じているはずだ。

 すでに発表されている来春のキャンプ日程で、例年より1クール長く1次キャンプ地の日南にとどまるのは、徹底的に鍛え上げるという意思の表れだと受け止めている。これは大賛成だ。選手もそのつもりで臨むことだろう。

 そんな中、緒方監督に一つだけメッセージを送るなら「キャンプでは選手と一緒になって体を動かせ」と言いたい。まだ47歳で老け込む年齢ではない。現役時代は口数の少ない努力家タイプだったのだから、そのスタイルを貫けばいいのだ。

 ウオーミングアップから選手とともに汗を流せば、選手だって「今年の緒方監督は違うぞ」となる。キャンプ、オープン戦の間に腹の中にある毒を全部出してシーズンに臨めば、コーチも選手もついてくるはずだ。そうすれば、おのずといい結果が出るのではないか。

(本紙専属評論家)