広島 投手王国づくりのキッカケとなる“消えた15勝”

2015年12月29日 12時14分

前田の穴埋めが不可欠だが…

 今季の広島は3年ぶりのBクラスに沈んだ。ベテラン・黒田の現役続行は決まったが、エースの前田はポスティングシステムを使ってのメジャー移籍を目指している。25年ぶりのリーグ優勝には“消える15勝”の穴埋めが不可欠だ。しかし、本紙専属評論家の大下剛史氏は「これが投手王国作りのキッカケになる」と断言する。いったい、どういうことなのか? きょうから3回にわたって来季のカープを占う。第1回は投手編——。

【大下剛史・熱血球論:年末集中連載(1)】まだ正式決定したわけではないが、今季15勝を挙げて、ともに2度目となる沢村賞と最多勝に輝いた前田は、ポスティングシステムを利用してのメジャー移籍を目指している。15個の勝ち星が消えてしまうのはマイナスだし、ファンが「マエケンの抜けた穴は埋まるのでしょうか?」と心配するのも無理はない。

 しかし、必ずしもマイナス面ばかりではないというのが私の考えだ。今年の前田は5度の完投を記録しているが、完投勝利となると6月19日のDeNA戦での一度きり。あとは全て、大瀬良や中崎らの救援を仰いでいる。球数は100球がメドだ。

 託された試合を一人で賄うのが、エースと言われる投手の本来のあるべき姿である。それでこそ、経験の浅い若手や完投能力のない投手が先発した試合で惜しみなく救援陣を投入して、勝ち星を拾うことが可能になる。Aクラス、さらには優勝を目指すうえで、不可欠なことだ。

 6年連続2桁勝利を達成した安定感は大したもの。いい投手であることは間違いない。だが、いくら前田が勝ち星を稼いでもチームの優勝に直結しなかった。なぜか? 厳しいことを言うようだが、エースとしての働きができていなかったからだ。

 幸いなことに進退で悩んでいた黒田が、現役続行を決断してくれた。おそらく最後のご奉公という気持ちで、自らの経験や仕事に対する考え方を若い投手に伝えてくれることだろう。そういう意味で、来季は再び投手王国をつくり上げるための第一歩となるはずだ。

 過去を振り返っても、広島が優勝したときには投手力をバックに少ないリードを守りきるという野球をしてきた。若手の中には素材のいい投手がたくさんいる。一、二軍の投手コーチ全員が一丸となって育成に力を注げば、きっと新たな芽が出てくるはず。決して悲観する必要はない。(本紙専属評論家)