“世界の鉄人”こと、阪神・金本知憲監督(47)が誕生して約2か月が経過した。「超変革」をスローガンにした新指揮官への期待は年の瀬に入ってもさらに強まっているが、本当に大丈夫なのか。阪神OBで本紙評論家の遠山奨志氏が来季の戦力分析したところ、とても流行語の「安心してください!」とは言えない状況が…。

【遠山奨志 ブラッシュ一本締め】金本監督が就任してからファンやマスコミの期待が異常に高まっている。私のところにも「金本さんやったら大丈夫やね」と喜ぶ声が圧倒的に多い。それも当然のこととは思うが、私は元来、最悪の事態を想定しながら野球を見てしまうタイプ。心配性だからこその不安が頭をよぎって仕方ない。

 まずは今季自己最多の14勝を挙げた藤浪だ。来季はエースとしての働きが計算されているが、果たしてその通りいくかどうか。ここまで3年間、彼は本当に素晴らしい働きをしたが、蓄積疲労は確実にある。それが来季にモロに出てくる気がしている。事実、今季は登板過多もあって終盤に右肩に炎症を抱えたことを忘れてはいけない。今オフはノースローを貫いており、秋季キャンプでも他の投手と違って満足な練習ができていない。疲労もこのオフでどれだけ取れているのか。本人は「防御率1点台を目指す」などと高い目標を掲げているが、フタを開けてみないと分からないだろう。

 今季13敗を喫したかつてのエース・能見も気になる。すでに金本監督は先発ローテ入りを明言しているが、今年の投球を見ていると、もはや大きな期待はできない。来春キャンプの状態次第ではリリーフ起用の可能性を模索した方がいいと思う。逆にそのほうがブルペン陣に厚みが出ていいとみているのだが…。

 4年ぶりに復帰する藤川も不安材料だ。虎党はあの「火の玉ストレート」を投げ込む姿を想像しワクワクしているはずだが、彼が受けた腱移植手術、いわゆる「トミー・ジョン手術」は受ける前とその後で全く違う球質になることもあると言われる。それがどう出るか。ダメだった場合の扱いも難しくなってくる。

 今オフはマートンが退団して守護神・呉昇桓も「賭博スキャンダル」でいなくなった。その代わりをへイグ、年明け発表となる新助っ投マテオらに任せる方向だろうけど、最初からあてにできないのは誰にでも分かる。現時点では今年の流行語になった「安心してください!」には残念ながら至っていないのが実情でしょう。

 新年を前に暗い話ばかりするな、とお叱りを受けそうだが、期待はしている。藤川の野球に取り組む姿勢は後輩たちに好影響を与えるはずだし、金本監督は「レギュラーが決まっているのは鳥谷と福留、ゴメスの3人のみ」と言っており、今は名前も挙がっていないような選手に出てきてほしいと思う。言えるのは今の阪神はこれだけ不安があっても同時に優勝できる可能性も秘めていること。今後の行方をしっかり見届けたいところだ。 (本紙評論家)