去就が注目されていた広島・黒田博樹投手(40)が来季も現役を続行することが決まった。8日、交渉役の鈴木清明球団本部長(61)に「来年もやります」との連絡が入った。契約更改交渉は来週以降にも行うという。球団はエースの前田健太投手(27)のポスティングシステムを利用してのメジャー移籍を容認したばかりで、男気右腕の決断にはひと安心だ。

 最後まで黒田は悩んでいた。今季は8年ぶりにメジャーから復帰し、40歳という年齢をものともせず11勝(8敗)をマーク。防御率2・55と変わらぬ安定感を見せつけ、日米通算200勝まであと7勝と迫った。しかし黒田は、11月末に「心技体の心の部分が大事。体を動かすのも気持ち。今年はモチベーションが高かっただけに、それを超えるものを探すのは難しい」と発言。自らを奮い立たせるものを模索していることを明かした。

 前日7日には鈴木本部長と約2時間にわたって今オフの補強や来季の展望といった踏み込んだ話し合いも行ったという。エースの前田に対してポスティングシステムを利用してのメジャー移籍を容認した状況で、球団の“本気度”を確認しておきたかったのだろう。それを踏まえての「来年もやります」との決断だった。

 球団にとってはホッとひと安心だ。今季15勝の前田ばかりでなく、黒田までも抜けるとなれば一大事。即戦力の呼び声も高いドラフト1位の岡田明丈投手(22=大商大)と同2位・横山弘樹投手(23=NTT東日本)が入団し、新外国人投手の獲得を目指しているとはいえ、そう簡単に26勝を埋めることはできない。なにより黒田というカリスマを失うことは、数字では計り知れない損失となるところだった。連絡を受けた鈴木本部長が「ホッとしているのと『よしっ!』という思い」と話したのは偽らざる本音だろう。

 早ければ来週にも契約更改交渉が行われる。球団側は「キャリアを見ても恥ずかしくない金額を提示したい」(鈴木本部長)としているが、黒田が現役続行の意思を先に伝えたのは、年俸よりも重視していることがあるからこそ。もちろんそれは、日米通算200勝という個人記録でもない。

 鈴木本部長は「(決断まで)1か月以上も考えてくれた。やる以上は大きな目標(優勝)を持ってやってくれるでしょう」と期待を込めた。新入団選手も含めてナインから「黒田さんから学びたい」との声はよく聞かれるが、残された時間はそう多くない。男気右腕の決断を生かすも殺すも選手、フロントを含めたチームとしての本気度次第だ。