巨人が20日、宮崎秋季キャンプを打ち上げた。新体制で臨んだキャンプは大きな故障者を出すことなく、無事に2週間の日程を終えた。高橋由伸監督(40)は慣れない監督業のなかでも、随所に新指揮官らしさをのぞかせた。原前監督時代のキャンプでの“名物”が、ひっそりと姿を消していたこともその一つだ。

 キャンプ最終日は晴天に恵まれ、由伸監督はフリー打撃、ブルペンでじっくりと目を配り、昼過ぎに練習を終了した。

 最後は新選手会長・長野が「厳しいキャンプでしたが、いい雰囲気で練習できたと思います。来年は優勝して監督を胴上げできるように頑張りましょう」とあいさつ。三本締めで秋季キャンプを打ち上げた。

 前監督の退任を受け、急きょ現役を退いて指揮官となった。ドタバタのなかキャンプに突入した由伸監督は「最初に『強化』というテーマを掲げて、来季どういう結果が出るか楽しみな内容のキャンプだったと思います」と充実の表情で総括。自身についても「僕だって始まったばっかりですから。時間がたてば見えることも増えると思う。急には立派な監督にはならない」と振り返った。

 指揮官としてはまだまだ手探り状態というが、実は巨人キャンプの名物がこっそりと“撤去”されていた。それが原前監督が打撃ケージ裏から練習を眺めていた通称「原タワー」だ。キャンプ初日の7日こそ定位置に用意されたが、由伸監督はタワーに上ることなく翌8日からはグラウンドにお目見えせず。雨天のため室内練習場にこもりっきりの日も少なくなかったが、最終日まで晴れていても初日以外は一度も登場機会はなかった。

 チーム関係者によれば“タワー撤去”は由伸監督の意向によるものだそうで「(由伸)監督は選手を高いところから見下ろすのではなく、できるだけ近い距離、目線で接したいようです。ましてや、ついこの間まで一緒にプレーしていた選手だったわけですから、急に上から目線にはなれないみたいですね」と気持ちを代弁する。

 他球団では「キャンプMVP」を挙げる指揮官もいるが、由伸監督は「ウチのチームはウチのチーム。みんなが高い意識でやっていた。誰がというのはない。(報道陣が)言ってほしいのは分かりますけど」と選手に優劣をつけようとはしなかった。

 このまま「原タワー」は消えてしまうのか。それとも春季キャンプで復活を遂げるのか。いずれにせよ“由伸流”は各所に表れていた。