上原浩治「中継ぎピッチャーズバイブル」

 右手首骨折の影響でレッドソックスの上原浩治投手(40)は60日間の故障者リスト(DL)に入ったままメジャー7年目のシーズンを終えた。地区優勝、プレーオフ進出の可能性が早々と消えたにもかかわらず、懸命にプレーするチームメートの姿をベンチでどう見たのだろう。守護神は2016年シーズンでの完全復活に向け、汗を流している。

 8月7日(日本時間8日)のタイガース戦で右手首に打球を受けてから51日が経過した9月27日(同28日)、上原はキャッチボールを再開した。当初の「10月に入ってから」との予想を前倒しした。順調に回復しているということなのだろう。現在は走り込みに重点を置いてトレーニングしている。

 DL入りし、試合に出ることができなかった上原は遠征も含めチームに同行した。試合中はベンチに入った。

「普段はブルペンにいるけど、正直言ってベンチでは何をしていいか分からへん。それ以外の生活リズムは一緒やけどね」

 メジャーではDL入りしている選手も含め、ロースターに入っていれば出場登録されていない選手でもベンチ入りすることが可能だ。ただ、義務ではないので、DL入りしている選手はベンチ入りしなくてもいい、ということにもなる。

「実際はどうなんやろうな? 分からへん」と話す上原は試合開始からずっとベンチの奥で、ナインの邪魔にならないように過ごしている。思うところがあるのか、それとも何かアンテナでも張っているのか。

「いやいや、チームが優勝争いでもしていれば、いろいろと考えることがあるんやろうけど、特に何も考えていないですよ。ホンマ、ベンチにいるだけで、何もできないですから」

 新鮮に映るシーンもあるだろうが、上原は「野球をやっている以上、ベンチから見ていて投げたいなあって思うことはありますよ。だから今、充実はしていないですよ」と話す。

 今季中の復帰はドクターストップがかかった。「フラストレーションとか、そんなにたまっているわけじゃないですし、別にないですね。もう投げないって決まっていますから」

 ブルペンで待機しているときは相手打者の動きをじっくり観察していた上原だったが、ベンチではフラットに戦況を見ている。上原はこう話す。

「来年になれば、チームとか打者のアプローチも変わってくるだろうし、そこまで見ていない。今年、もし、後半に復帰するんだったら、ちょっとはそういうふうに見ていたかもしれないけどね。僕の場合、1回シーズンが終わると完全にリセットするので、特にデータを取ろうと思わない。(今ホットな打者かどうかなどは)見ていれば分かることなので、あらためてっていうのはない」

 それゆえ来季への思いは強い。長期的なビジョンでしっかりと見据えている。自主トレは毎年11月から行っているが、今年は1か月前倒しになった。

「(来春の)キャンプはもちろん、いい状態で迎えられると思っていますよ。今年(のオフ)は休みなしで動いていくでしょうね。もう練習漬けです。練習第一なのでね」

 例年とは違う形でオフに入る。どういう心境なのか。

「プラスに持っていこうとか、マイナスになろうとか、そんなん考えたことがない。過ぎたことやし、今は下半身のトレーニングとか、できることをやるしかない。ただ、来季に向けての不安というのは、ケガがどうこうではなく、始まるまでは毎年ありますから。だから、手首がどうという不安はないです」

 来季はレッドソックスとの契約最終年。チームはオフの課題としてブルペン投手の補強も挙げており、保険としてクローザークラスの獲得に動く可能性もある。

「(レッドソックスは)来年で最後になる可能性はもちろんありますよ。でもやることは変わらない。毎年毎年が勝負。その意識に変わりはない。それに抑えをやるかどうかは僕が決めることじゃない」

 声には出さないだけで、クローザーへのこだわりがないわけではない。上原が最優先で意識を置いているのは充実したオフの自主トレを行うことだからだ。そして来年2月3月のキャンプを順調に過ごし、4月4日(同5日)の開幕戦を万全の状態で迎え、6か月のレギュラーシーズンと1か月のポストシーズンを走りきる。

 上原にとってメジャー8年目、プロ18年目となる16年シーズンはもう始まっている。