チーム「変革」に燃える阪神・金本知憲新監督(47)が高知・安芸での秋季キャンプで熱血指導を展開している。今やその注目度も最高潮に達しているが、そんな熱い新指揮官のここまでを虎OBで本紙評論家の遠山奨志氏が緊急チェック。辛口でならしてきた同氏が感じた「金本阪神」への提言とは…。

【遠山奨志・ブラッシュ一本締め】10月19日の金本監督の就任会見から約2週間が経過した。私としてはここまでの「すべての意識を変えていきたい。変えないと勝てない」「勝ちながら再建できるようにしたい。時間に甘えない」「立て直すために勝つために全力を尽くすだけだ」と豪語した新監督には大いに期待している。ベテランの鳥谷やエースに成長した藤浪にも「物足りない!」など容赦なし。発言に切れ味があって非常に分かりやすい。関西人は変化とか新しい物が大好きだから、これならファンの後押しも心配ない。今の「変革」という路線をどんどん推し進めてチームを生まれ変わらせてほしい。

 金本監督には「壊し屋」にもなってほしい。「破壊は最大の建設」というでしょう。阪神の選手はすぐにファン、マスコミなどから持ち上げられて勘違いしてしまうなど環境が特殊。ずっとそれが過去の監督でも解決できず、結局慣れてきたという悪しき伝統がある。そういう古い体質も含めて徹底的に破壊して、新しい“体質”が生まれることを望む。

 といっても今はまだ就任したばかり。監督としてできるだけ早く、自分のやりたい野球や考え方を選手やコーチ陣に伝えようとしているところだろう。その辺りは心配していない。話のうまい男だから。キャンプ初日に返事の声が小さかった選手を叱り飛ばす厳しさも持ちつつ、しっかり笑いもとっているようだし…。このままアメとムチを使い分けつつ、コミュニケーションをとれば「俺はこういう野球をするんだ」というものはスムーズに伝わるはずだ。

 加えて金本監督には、マスコミをうまく使ってほしい。テレビや新聞を通じて、選手に自分の考え方を伝えるやり方だ。あえて苦言をマスコミを通じて口にしたり。その辺りは「マスコミは戦力」と口癖にしていた星野仙一さん(現楽天球団取締役副会長)のやり方が一番参考になる。特に阪神はマスコミを味方につけるかどうかで環境が大きく変わる。現役時代から「自分は全方位外交。敵は作らない」と話していたそうだけど、マスコミに対してもその路線を貫くべきだ。ま、大スポは言うことを聞かないかもしれないけど(笑い)。

 練習のことも提言したい。金本監督は2日に選手のウエートトレーニングを視察して「(練習)メニューの一環として強制力を持たないと。『僕は嫌いだからしない』とか『いいと思わないからやらない』ではなしに、当たり前のこととしてやっていかないと」と話したと聞いた。これまで個別メニューとして、選手の自主性に任せるところが大きかったウエートトレーニングを来春キャンプから全体練習に組み込む方針のようだ。彼自身、現役時代から熱心に取り組んできたから、その重要性を実感しているんだろう。それに多少なりとも「今の阪神の選手は体が小さい」というものも感じているんじゃないか。だからこその発言なんだと思う。

 そこで、金本監督だからこそできることがある。それは選手と一緒に筋トレをすることだ。引退してまだ3年。十分体も動くだろうし、引退後もウエートトレーニングは継続していると聞く。だからキャンプのみならずシーズンに入っても、選手に交じってトレーニングをするといい。金本監督本人がトレーニングをやってみせれば、それこそいいお手本。指導もできるし、選手も気を抜くわけにいかない。練習では事実上の「選手兼監督」。ともに汗を流しながらコミュニケーションも取れば、一石二鳥にも三鳥にもなる。

 金本監督でチームが、選手が、どう変わっていくのか。今から来年が楽しみでしょうがない。過渡期だ何だとか言われるけど、優勝の期待だってしている。(本紙評論家)