野球賭博問題の渦中にある巨人が22日のドラフト会議で立命大の桜井俊貴投手(22)を1位指名し交渉権を獲得した。

 立命大からの巨人入りは、支配下選手では2006年希望入団枠で入った金刃憲人(楽天)以来となる。桜井本人も野球部関係者も名前が読み上げられるまで半信半疑だった。理由は「巨人との因縁」だ。関係者が口を揃える。「清武さんの件があって、ウチと巨人はもうダメだというふうに思っていましたから、桜井の指名は正直ホッとしています」

 理由は11年晩秋に勃発した「清武の乱」だ。巨人のコーチ人事に不当な介入があったと記者会見で批判し、球団代表を解任された清武英利氏は立命大のOB。泥沼の法廷闘争にまで発展した一連の騒動で、大学側は巨人側の敬遠を感じずにはいられなかった。12年オフに金刃がトレードで楽天へ移籍すると疑心暗鬼は強くなるばかり。そうしてチーム内では「ウチと巨人は…」となった。

 たかがOB。だが「プロ野球とはそういう世界。ささいなことが大きくなる。ウチとは絶対ダメという球団は他にもありますし」(別の関係者)という。そういう事情もあり野球部内では「カムフラージュ」「駆け引きで名前が挙がった」など、ドラフト直前の指名濃厚報道をすんなり受け入れられなかったという。それゆえに「読売、桜井」の声を耳にした瞬間“雪解け”を実感し、安堵感が広がった。野球賭博問題で信頼失墜も「巨人」のブランド力は球界随一。“関係改善”を確信する公言どおりの1位指名に、大学側の喜びはひとしおだった。

 桜井も「自分の後に立命から後輩が入ってくれるように活躍したい。巨人のエースになりたいと思います」と意気込む。逆風に立ち向かう巨人も、新時代を切り開くべく過去の因縁とも決別を図ったのかもしれない。