【歴代巨人担当キャップが振り返る原監督】

 原監督といえば、ナインに対する厳しさで知られる。近年では特に「チームの枢軸」として期待した阿部、村田、坂本、長野の4人に対しては時に非情にも思える采配で物議を醸すこともしばしばだった。しかし、根底にあるのは愛情だった。こんな話を聞いたことがある。

 昨年亡くなった監督の父、貢さんからある時、こう諭されたそうだ。

「長野、あれはいいバッターだ。しっかり育てないといかんぞ」

 長野がある試合で4三振をしてカッカしていた時に言われ「オレも親父に育てられた。その恩を長野にも返したいと思ったんだ」と原監督は振り返った。

 今季の長野は故障明けでなかなか調子が上がらなかった。それでもスタメンで起用し続けたのは貢さんからの“遺言”も頭にあったのだろう。

 一方で周囲には気配りの人でもあった。最近では、産後復帰を果たした私を見てひと言。「意外とやつれてなくて、安心したよ。育児は体力勝負だからね」とにっこり。言う人が違えば、嫌みともなりかねないが、さわやかな原監督から言われると、納得してしまうから不思議だ。

 現在、57歳。再登板も当然、あるだろう。野球復活が濃厚とされる、2020年、東京五輪。「指揮を執る気はありますか?」と聞いたことがある。答えは「そういうものは自分から決められるものじゃない。周囲から求められてなるものだから」。その“時”は必ずめぐってくるはずだ。

(関根香世子=巨人担当キャップ・07年、10~11年)