【歴代巨人担当キャップが振り返る原監督】

「厳しい人だなあ…」

 6年前、私が初めて原監督に接したときの印象だ。グラウンドで大胆なタクトを振る指揮官は“非情”を超えて“冷酷”に映った。正直、その印象は今もあまり変わらない。「東スポは自由に書けよ!」と言われても、あの大きな目で見据えられるとひるんでしまう。原稿で采配に物申さねばならないときなどは、翌日いつもドキドキだった。

 しかし、私とは正反対の言葉を口にする人たちと出会ってから、原監督に対する印象は少しずつ変わった。地方のある繁華街に、指揮官が現役時代から通うスナックがある。その店のママいわく、「いろんな男を見てきたけれど、辰ちゃんほど“優しい男”はいないわ」。

 ママによれば、ユニホームを脱いだ監督は穏やかな紳士そのもの。お店の女性たちへの接し方は丁寧で、お供のコーチ陣にも「好きなものを食べろよ、酒は足りているか?」と常に気配りを欠かさないという。店を出てからも紳士。ママの母親が亡くなった際には、遠く東京から花輪に加えて励ましのメールまで届き、思わず泣かされたと話す。

 実は私が監督の“いい話”を聞かされたのは、一度や二度ではない。全国どの街でも、素顔の監督を知る“ママたち”は、うっとり顔で「優しい人なのよ~」と口を揃えるのだ。立場上、酒席を共にしたことはなかったが、私が知らない“夜の若大将”は、やんちゃな現役ナインを抑えて人気ナンバーワンだった。

 カラオケの十八番はシャ乱Qの「空を見なよ」。最後は大団円で、加山雄三の「サライ」を歌って締めるのが定番。「いつか帰る~、いつか帰る~、きっと帰るから~♪」。口ずさめば、永遠の若大将の去り際に、なんともふさわしいではないか。監督、お疲れさまでした。いつか僕も一杯、ご一緒させてください!

(堀江祥天=巨人担当キャップ・2015年~)