【伊原春樹 新・鬼の手帳】

<パCS第3戦:ソフトバンク3-1ロッテ(16日)>この日の試合も目立ったのは1戦目(14日)に続いて投げた千賀だった。7回無死一、二塁で先発の中田に代わって2番手で登場し、クルーズを併殺打、今江をフォークで内野ゴロに仕留めた。精神的にも強くなったし、すごい投手になったと思う。五十嵐、森も球は速いけど、三振を取れる球がない。大事な場面で三振が取れるフォークが千賀にはある。モノが違う。

 私が監督として西武を率いた2002年、中継ぎに森慎二(現西武二軍投手兼育成コーチ)がいた。満塁などのピンチに出ていって速いボールで必ず三振を取ってくれた。千賀を見ていて思い出した。日本シリーズでも大きな存在になるだろうし、活躍すると思う。

 振り返ると初戦がポイントだった。涌井を中4日で4戦目に使うためにも伊東監督は初戦にかけていたと思う。だからこそ早めの継投でどんどん投手をつぎ込んだ。勢いで下克上を果たすには最初にどれだけソフトバンク打線を抑えられるか、だった。だが、そうはいかずにサヨナラ負け。伊東監督は「しょうがないな」というような表情だったが、腹の底では「チクショー」と思っていたはずだ。

 工藤監督は「一つも負けるつもりはない」と言っていたが、勢いとかではなく、冷静に自軍の戦力と相手の戦力を見極めてのことだろう。ロッテに負けるはずがない、劣っている部分はない、とね。ケガが心配された柳田も1戦目に本塁打が出たし、大丈夫。スイングも問題ない。

 ソフトバンクは昨年、日本一になって、連覇を目標に今季もほぼ同じメンバーでやってきたけど、バンデンハークが途中から出てきて、さらに戦力が増した。さらに長谷川や本多をケガで欠いても工藤監督が二軍スタッフと相談し、戦力を見極め、若い選手で穴を埋めることができた。何度も言うけど、あの強力な投手陣なら、連続日本一になれる可能性は高いと思う。(本紙専属評論家)