パ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ(ヤフオクドーム)は14日から始まる。圧倒的な強さでリーグ制覇した工藤ホークスに分がありそうだが、本紙専属評論家で工藤、伊東両監督を現役時代からよく知る伊原春樹氏は「ロッテにも勝機はある」と指摘した。

【伊原春樹「鬼の手帳」】レギュラーシーズンでは優勝したソフトバンクと3位ロッテは18・5ゲーム差あった。もちろん短期決戦は別物だが、戦力を比べれば、どう見ても有利なのはソフトバンクだ。

 しかも、ソフトバンクが万全の状態で先発投手を5枚を揃えられるのに対して、ロッテは15勝で最多勝に輝いた涌井と12勝の石川がファーストステージで投げている。初戦の先発は大嶺祐で、武田と対するとなれば分が悪い。その中で1勝のアドバンテージがあるのだから、優位は揺るがない。

 そんな中でロッテの勝機を見いだすとすれば、第1戦と第2戦の戦い方になる。待つ立場の優勝チームは、どうしても本番の試合から遠ざかっている。紅白戦で調整をしているといっても、最初の2試合はおそらくそう点が入らないはず。一方のロッテは日本ハムの好投手3枚と当たってきた。スムーズに入れる強みがある。ここでロッテが2つ勝つようなことがあればチャンスが生まれる。

 両軍の監督は私のライオンズ時代の後輩だ。ロッテは先発陣を見て寂しく感じていたが、伊東監督が後ろのリリーフ投手を計算しながら、耐えて耐えてとやってきた。戦力的に3位は西武だと思っていたが、田辺監督との経験の差が出たのだろう。一方のソフトバンクの工藤監督も頭が良く、よく勉強もしている。それは選手の起用に表れている。

 ただ、以前にも指摘したことだが、私には工藤監督のベンチでの表情が気になって仕方がない。同じ後輩である楽天・大久保監督などは、目の前の1試合1試合に勝負をかけている表情だった。チームが逆だったら果たして笑みを浮かべられただろうか?

 2人の性格は全部知っているが、伊東監督は心の中で相当に燃えるものがあるだろう。もらった戦力で戦うのが指揮官の仕事だが、ソフトバンクを見て、すごい戦力だなと思っているだろうし、ベンチでの工藤監督の姿を見て“やってやろう”との思いも強いはずだ。心してかからないと、ソフトバンクが痛いめに遭う可能性だって十分にある。

(本紙専属評論家)