クライマックスシリーズ(CS)ファーストステージ(10日開幕)に臨む阪神。2年連続セーブ王の守護神・呉昇桓が右内転筋痛で離脱、和田監督も今季限りでの退任決定…と何とも締まらない状況ばかりが目立つ中、どんな戦いを見せるか。本紙評論家の遠山奨志氏が「下克上V」に向けての“激辛エール”を送った――。

【遠山奨志「ブラッシュ一本締め」】10年ぶりのV奪回が「9月の大失速」でパーになって、和田監督が今季限りで退任。そんな背景をバックに借金1でのタナボタCS進出だから、2連敗してとっとと終わるだろうとみている方も多いのかもしれないが、僕は逆に最後の最後で指揮官の「ニュー和田野球」が勝利を呼ぶと思っている。

 和田監督の表情を見ていると退任が決まったことで「勝たなアカン」という重圧から解放されている。これまでは監督の性格から試合ではセオリー通りの作戦を重視してそれで墓穴を掘るなど、能力が発揮できなかった面があった。でも、もう会社の顔色を気にする必要はないし、おそらくファンも大きな期待もしていない。いまさら勝ち続けて仮に日本一になっても続投はないんだから、いい意味で自分がやりたくてもできなかった野球や作戦を期待したいし、できると思う。

 振り返れば、昨年4連勝した巨人とのCSファイナルステージ初戦、先頭打者が出て、珍しくエンドランを敢行して先制点を奪ってから勢いに乗った。和田監督は開き直るといい部分が出る。言い方はまずいけど、今年は「首輪」が完全に取れた状態。かしこまった野球ではなく、このCSでは「和田監督ってこんな野球ができたんだ」と驚かせてくれるんじゃないか。

 泣いても笑っても最短なら2試合。9日の全体練習で和田監督は「2015年の集大成をファンに見せたい。われわれが守りに入る要素は何もない。ここで巨人に4連勝したといっても去年のこと」と話したと聞いた。藤浪も「3位になった敗者なんで失うものはない。背負うことも気負うこともない」と、えらく冷めていたそうだが、逆に面白い。

 そもそも和田監督が潔く責任を取った原因は選手にもある。そういう意味でも選手はCSで奮起しなければならない。まずは昨年の“G倒再現”。そして「下克上」での日本一まで…。みんなが開き直れば、もともと力はあるチームなのだから、できないはずはない。

(本紙評論家)