来日中の大物代理人、スコット・ボラス氏(62)が9日、日本ハムを表敬訪問し、ナイターで行われたソフトバンク戦(札幌ドーム)を観戦した。2006年オフ、入札額も含めた総額1億311万ドル(当時約120億円)で松坂大輔(現ソフトバンク)をレッドソックス入りさせるなど、数々の大型契約をまとめたスーパーエージェントが来日した真の目的とは――。

 夕方5時過ぎ、3人の日本人事務所関係者を引き連れ、タクシーで札幌ドームに降り立ったボラス氏。応対した日本ハム・島田利正球団代表、岩本賢一チーム統括本部副本部長らと約30分歓談した。

 ボラス氏本人は報道陣に対応することなく、来日理由などについては事務所関係者が「明日、神宮に行くのでそこで」とかわした。

 表向きの来日理由はオリックス・中島、阪神・鳥谷、楽天・ぺーニャら自らの抱える選手のケアなのだろう。その一方、決して公言することのない“裏の目的”は、新たなクライアント獲得のための現地調査だ。この日の試合、10日のヤクルト―DeNA戦(神宮)視察の予定から、ターゲットはトリプルスリー達成が確実視され、多くのメジャー関係者も注目する旬のターゲット、ソフトバンク・柳田悠岐外野手(26)、ヤクルト・山田哲人内野手(23)の視察。そして近い将来のメジャー挑戦と超大型契約が約束された「次の大物」大谷翔平投手(21)とのコネクション作りだ。

 本来、これほどの大物代理人がシーズン中に来日し、特定球団を表敬訪問することはまずない。もともと新庄のメッツ時代の通訳で米球界に人脈の広い岩本副本部長と個人的な面識があるとはいえ、選手を介して常に球団と利害関係にある代理人が堂々の正面突破で日本ハムに接触した背景には、大谷のガードの堅さがある。

 多くのメジャー球団関係者が「仮に大谷に接触したくても、窓口がどこにあるのか分からない」と嘆くように、将来的な大谷のメジャー移籍を入団の経緯から「球団の使命」と受け止める日本ハムは、二刀流右腕の徹底ガードを3年目の今も継続中だ。外で食事をする時は「どこで、誰と会うのか」「そこに第三者はいるのか」を逐一、栗山監督に報告し許可を得なければいけない“大谷ルール”がある。

 その本来の目的は、こうしたやからの接触を未然に防ぐ意味合いが大きい。彼らが十八番とする「裏での接触」ができないがゆえの正面突破という側面も、この日のボラス氏訪問の背景にはある。

 現在、米国出張中の吉村浩チーム統括本部長兼GMはじめ米球界での研修、実務経験があり人脈も幅広い球団幹部、職員が複数いる日本ハムが目指す方向性は「大谷移籍の際のエージェント業務を球団が請け負うのではないか」(メジャー関係者)ともみられている。となれば、ボラス氏をはじめ虎視眈々と大谷の代理人の座を狙うエージェントにつけ入る隙はない。

 球界初となる「球団代理人」のシステムの実現とともに、大谷の今後には大きな注目が集まっている。