巨人の1日のヤクルト戦(富山)は試合前に雨天中止。先発予定だったエースの菅野智之(25)はスライドせず、次カードのDeNA戦(横浜)に回ることが濃厚となった。そんな中、球団側が優勝争いへ、いよいよギアを入れた証しが、この日のマウンドから浮き彫りとなった。

 開始予定時刻の前から雨脚が強まり、プレーボールがかからないまま、午後6時50分に中止決定のアナウンスが球場内に流れた。身支度を済ませてナインが足早にバスに乗り込む中、菅野は「中止になったということは、また対戦する機会があるので、しっかりリベンジできるように頑張りたい」と次を見据えた。菅野はスライドせず、4日からのDeNA3連戦での登板が濃厚だ。

 菅野は前回登板した8月26日のヤクルト戦で4回4失点。神宮球場はプロ3年目で未勝利と鬼門になっており「リベンジ」にかける思いは強かった。それ以上に打倒・ヤクルトに神経をとがらせていたのは球団サイドだった。

 最近のチームは連勝後に連敗する展開が続き、3連勝中の勢いを止めたくないところ。シーズンも佳境を迎え「1勝」を取りに行く姿勢は、この日のマウンドにも表れていた。実は6月中旬に、富山アルペンスタジアム関係者が東京ドームまで視察に訪れ、グラウンドキーパーと意見交換。マウンドの構造などを細かく把握し、東京ドームで使用されている粘土質の「荒木田土」を同球場のマウンドに埋めて、硬くドーム仕様に“改造”した。

「マウンドをできる限り東京ドームの状態に近づけました」と明かした同球場関係者は「巨人側から最も言われたのは、ブルペンとマウンドを同じにしてほしいということでした。ブルペンとマウンドが違えば投手の感覚を大きく狂わせてしまうので、入念にチェックを繰り返しました」と説明した。

 今季の菅野は、本拠地では8試合で3勝3敗ながら、防御率2・05と安定感抜群。この日の振り替え試合は東京ドームで行われる。原監督が「残念ですね。状況として(試合開催が)難しいということ。良識ある判断」と話したのも“地の利”を見込んでのことだろう。連勝ムードに水を差されたが、実のところは“恵みの雨”だったのかもしれない。