巨人が逆転4連覇へ、いよいよスパート態勢に入った。20日の阪神戦(東京ドーム)も2―1のサヨナラ勝ちを収めて3連勝。その差を0・5とし、首位の座を視界に捉えた。苦しんだシーズンも、残り30試合。百戦錬磨の原辰徳監督(57)はここからどうチームを導くのか。指揮官の胸中に、OBでもある本紙評論家・前田幸長氏が迫った。

【前田幸長 直球勝負】盛り上がった高校野球の陰に隠れてはいたが、今回の“伝統の一戦”はペナントの行方を左右する重要な3連戦。巨人にとっては負け越せば“自力V消滅”という正念場だった。

 さすがに巨人の選手は勝負どころを知っている。終わってみれば、結果は3連勝で一気に0・5差だ。土壇場でも「焦らない、慌てない」のが、優勝の味を知るチームの強み。そんな余裕は原監督からも伝わってきた。

 私が東京ドームへ足を運んだのは、18日の初戦だった。「よお、チョコ」。“天王山”を前にしても、原監督の表情と反応は普段とまったく変わらない。会話は時節柄、高校野球から始まった。

 原監督は「オコエ(関東第一)はいい選手だねえ。仙台育英のショート(平沢大河)も魅力的だな」。私がズバリ、「投手でナンバーワンはやっぱり東海大相模の小笠原君でしょう。ドラフト1位ですか?」と振ると「いい投手ではあるよね、フフフッ」と原監督。場が温まったところでいよいよ本題に切り込んだ。

「昨年も打てませんでしたが、今季はそれ以上に打てませんね」と語りかけた私に、原監督は「どうなってるんだよ」と切り出すと、自ら2人の“キーマン”を挙げた。

「やっぱり、勇人(坂本)と長野。あの2人には軸として期待しているんだがね…。ここ3年、どこまで伸びるかと思って見てきたが、俺からすれば物足りないんだよな」

 原監督は終盤を迎えて、ベテランの阿部と村田を投手の左右で併用する策も選択している。一方“サカチョー”に対しては、一貫して「信じて待つ」構えでいる。だからこそ、伸び悩む2人の姿が歯がゆく映るのだろう。

 また投手出身の私からすれば、今季は“勝利の方程式”が、不安定なのも気がかりな点。マシソン(7敗)、山口(4敗)、澤村(3敗)の3人合わせて14敗は、さすがに負けすぎている。これには原監督も一瞬、表情を曇らせつつ「彼らについては3回連続でやられたら考えるよ。しかし、今現在は崩すことは考えていない」と語っていたが…。先発陣が踏ん張っているなか、リリーフトリオの安定した働きが今後はより重要となる。

 ちなみに打線の不振については、村田総合コーチにも聞いてみた。私が冗談交じりに「責任は感じていますか?」と聞くと「当たり前やろっ!」と大きな声が返ってきた。波紋を呼んだ阿部と村田の併用策についても「仕方ないやろう。打てないんやから、バットを短く持つとか工夫せんとな。世代交代は来る。でも、その波を乗り越えていくのは彼ら自身や」と、率直に答えてくれた。

 首脳陣が実感しているように、今季の巨人に突き抜けられる強さはない。今回の3連戦で自力Vが消滅していれば、さすがに焦っていただろう。そこを3連勝したことで、全員が「いける」という手応えを感じ取ったはず。勝負は、やはり9月。結果に満足している選手は少ないだろうが、ここから“意地”を見せてほしい。(本紙評論家)