【ズームアップ甲子園】第12日(17日)の準々決勝で興南(沖縄)が関東第一(東東京)に4―5で敗れ、春夏連覇した2010年以来のベスト4進出を逃した。我喜屋優(まさる)監督(65)は「春夏連覇の文化が重荷になっているなら捨てなくてはいけない。このチームはそれを捨てて見事に進んできた。ヒーローはたくさんいた。失敗もあったかもしれないが、この先の人生の勝者になればいいだけです」と独特の表現でナインをねぎらった。

 ナインもまた我喜屋監督に感謝の気持ちでいっぱい。なかでも忘れられないのは新チームになったばかりの昨夏の出来事という。糸満(沖縄)まで出向いた練習試合で大敗。そのまま緊急ミーティングが行われ「戦う気持ちがない。頑張るしかないんだよ!」と大カミナリを落とし、ナインに学校までランニングして帰るように命じた監督が先頭に立って駆けだしたことだ。

 渡久地(3年)は「まさか監督まで走って帰るなんてびっくりしました。学校までの距離は20キロぐらいはあって、行きはバスで40分もかかったのに…。結局、僕らが途中で抜かしましたけど、そのまま監督は4時間かけて完走しました。監督の年を考えたら信じられない」と振り返る。ナインは「監督が走る背中を見ていたら、自分たちが本当に情けなくなった」と言い、選手だけでミーティングを行い「監督も相当悔しかったはず。ふがいないプレーは二度としないようにしよう」と誓い合ったそうだ。

 ほかにも、壁に向かって行う逆立ちをナインが「頭に血が上ってしまって1分やるのもしんどい」という中、監督が平気で1分超えしたこと。ノックは速射砲のようで「(漫画の巨人の星に登場する)オズマの“見えないスイング”並み」といつも驚嘆したこと…。「ウチの監督は65歳とは思えないぐらい元気。僕らも負けてられない」と奮い立ってつかんだ夏の甲子園。敗れはしたが、我喜屋監督との思い出は興南ナインの財産になった。