【赤坂英一「赤ペン!!」】今年もまた、原巨人には万に一つの望みもなさそうだ。優勝ではなく、チームの未来を担う若手が現れる望みである。セはDeNA・筒香、ヤクルト・山田、パも西武・森や秋山、ソフトバンク・柳田ら、他球団では生え抜きの若者たちが大暴れしているのに、巨人にはそういう生きのいい選手がとんと見当たらない。原監督が掲げた新スローガン「新成」という言葉もいまはむなしく響く。

 いい素材がいないわけではない。例えば昨季、初の開幕スタメンを勝ち取り、センターの定位置を確保した7年目の橋本だ。今季は開幕を二軍で迎えながら、4月16日のDeNA戦で川相監督代行に3番に抜てきされて大活躍。同期の大田や8年目の中井よりもレギュラーに近い存在だったのが、交流戦で二軍落ち。その間に外様の立岡(2012年にソフトバンクから移籍)が1番・中堅に定着してしまい、完全に後塵を拝している。

 橋本と立岡の差は何なのか。川相ヘッドコーチによれば、「一番大きいのは気持ち」だという。

「立岡は気持ちが前面に出るタイプで、ここぞという勝負どころで余計なことを考えたりしない。打撃も走塁も思い切りがよくて、いざというときにガッ!といける。橋本は逆に、頭がよくていろんなことがわかっている選手なんだけど、ここというときに気持ちでひるんでしまう。あれこれと考え過ぎて、体が動かなくなっちゃうんです」

 そう言われてみると、巨人の若手は総じておとなしい。大田や中井にしても、主力を押しのけてでも出世しようというギラギラしたものが感じられない。「でも、見どころのある選手がいないわけじゃないんです」と川相ヘッドはこう言った。

「例えば、捕手の小林は彼なりのガッツを持っていると思う。いつもポーカーフェースで、やる気が見えにくいんだけど、結構ずぶとい。ぼくが監督代行をやった甲子園での試合で、彼がミスをしたから、ベンチ裏に呼んで怒鳴りつけたんですよ。ほかの若手ならシュンとなるぐらい厳しくやったのに、小林だけはケロリとしてる。実際、翌日の試合でもしっかり仕事をしていた。もっと一軍で経験を積めば、面白い味を出してくるでしょう」

 そうか。では、冒頭の一文を最後に訂正する。巨人では小林がチームの未来を担う選手に大化けするかもしれない、と。