【ズームアップ甲子園】優勝候補の仙台育英(宮城)が第9日(14日)第1試合で滝川二(兵庫)に7―1で快勝し、順当にベスト16入りを決めた。プロ注目の佐藤世那投手(3年)が1失点完投。3年ぶりの3回戦進出を決めた。

 その裏には“ドラえもん”の力があった。試合の2日前(12日)の昼食後、メンバー全員が宿舎の一室に集められた。始まったのは、佐々木監督がセレクトした映画の観賞会。「午前中練習の時とか、午後に空き時間があるので見せているんです。映画を通して選手がおのおの感じてくれればと思っています」(佐々木監督)。始まるまで“上映作品”は伏せられ、スタートしたのは何と「STAND BY ME ドラえもん」だった。 同シリーズ初のCGアニメで、のび太とドラえもんの出会いと別れが感動的に描かれている。とはいえ、春の選抜では「永遠の0」を観賞して「命の大切さや、平和な中で野球ができることへの感謝の思いを強くした」(ナイン)だけに、あまりのギャップ…。

 しかし、選手は佐々木監督の意図を感じ取った。「『のび太が、ドラえもんに頼っていたら、いつまでたっても成長できない…自分の力で何とかするんだ』と奮起するシーンにウルッときました」「仲間の絆はもちろんですが『人は変われるんだ』って勇気をもらった」「次の試合は世那や平沢(3年)ではなく、普段は脇役の選手も活躍してくれると思います」。ドラえもん的存在は確かに大黒柱の佐藤世だが、頼ってばかりでなく、全員で勝利をつかまないといけない。ナインは気持ちを一つにした。

 佐々木監督からは映画観賞後「年を食っても感動するもんは感動するんだよ。ひと言ひと言を大事にしろ。たったひと言でも人は傷つくんだから」との短い言葉が贈られたという。ユニークな人間教育で知られる指揮官らしい指導法。この夏も仙台育英ナインはたくましく成長している。