清宮には負けない! 第97回全国高校野球選手権大会(6日から15日間)の組み合わせ抽選会が3日に大阪市内で行われ、注目の“スーパー1年生”清宮幸太郎内野手を擁する早実(西東京)は、第3日(8日)第1試合で古豪・今治西(愛媛)と対決することになった。混乱を避けるため、抽選会場には“VIP待遇”で登場した清宮だが、各校の主力投手ら球児たちは早くもライバル心をムキ出し。強烈な“宣戦布告”発言が飛び交った。

 清宮の存在感は別格だった。抽選会が行われたフェスティバルホールの客席に出場校の全選手が着席し、本抽選のスタートを待った時、早実のエリアに注目のスーパー1年生の姿はなかった。清宮は別室で待機しており、本抽選の直前になって報道陣のけたたましいフラッシュを浴びながら現れた。

 これは報道陣が清宮取材に殺到することを考慮した主催者側の混乱防止のための措置。清宮は抽選会中こそ早実ナインとともに着席していたが、終わると清宮だけの囲み取材が約10分間だけ行われ、その後は再び別室に移動してしまった。

 この“VIP待遇”、この日の甲子園見学で「暴れてやるぞ」と発言したことが他校の選手の闘争本能に火をつけた。ある選手はこう吐き捨てた。「なんであいつだけ遅れてくるんですか。なんでそんなに注目されているのかわかりませんよ。鼻っ柱をへし折ってやりたいですよ」

“和製ベーブ・ルース”“怪物スラッガー”として地方大会から注目されている清宮。もちろん、そのパワーは非凡とはいえ、他校の選手は決して異名通りにはとらえていない。大会屈指の好投手、東海大相模(神奈川)の左腕・小笠原慎之介(3年)は「全く怖くない。体が大きいだけでしょ。インコースのさばき方はうまいけど、インハイを投げて外角で勝負できる。それに守備で乱れる選手は打撃にも影響する。だから守備に難があるのってどうかと思いますよ」とバッサリ。地方大会では一塁手として初戦から2試合連続で失策を記録。また失策が記録されない拙守を何度も見せていることで打者としても“恐るるに足らず”というわけだ。

 春のセンバツにも出場した仙台育英のエース・佐藤世那(3年)も同様だ。「内側に速いのを投げて外角を投げれば打ち取れる。内側のさばきがうまいと言われているけど、そうは思わない。(西東京大会決勝戦の東海大菅生の)勝俣との対戦を見て、そう思った。当たれば飛ぶんだろうけど、特別な意識はしていないし、僕もセンバツから成長している。まだ1年生でしょ。甲子園の厳しさを教えてやりたいですよ。甘いもんじゃない」と目をぎらつかせた。

 他にも「(清宮は一塁の)守備が下手だから右打ちの集中打すればいいでしょう」「どこがそんなにすごいのかさっぱりわからない。イケメンでもないのに」「僕が潰してやります」などとライバル心ムキ出しの声が…。球児たちの誰もがそれだけ清宮を意識している証拠だろう。

 そんな“アウェー状態”の中、当の清宮は抽選でなかなか対戦相手が決まらなかったことで「まだかまだか、と待ち遠しくて、だんだん手先が冷たくなってきた。震えが止まらなくて、試合よりも緊張した」と照れ笑い。今治西については「いつも甲子園で見る名前で、伝統あるチームというイメージ。でもどこが来ても強いんで、自分たちの野球を貫くしかない」と話した。

 初戦は第1試合で午前8時試合開始。「今まで早くても試合は9時だった。6時にグラウンドに入ると聞いてびっくりしました。早朝野球みたいですね」と目を白黒させながらも「早起きは大丈夫」と不安要素にはならないことを強調。フィーバーについても「注目していただいてるんですけど、まだ自分の活躍がそこには全然追いついてないと思う」と浮かれたところは一切なく「ホームランとかを期待されていると思うが、そこはチームのためにヒットの延長がホームランになればいいなあと思ってるんで、チームのためのバッティングをしたい」ときっぱりだ。

 そんな清宮の意識しないところで完全に出来上がってしまった“清宮包囲網”。「目の前の試合を一つひとつ勝っていくことだけなんで、それが全国制覇になればいいなと思う」というスーパー1年生が、牙をむく猛者たちにどう立ち向かっていくか、注目だ。(本紙取材班)