【赤坂英一「赤ペン!!」】中日・谷繁(本稿ではあえて監督と呼ばない)が通算3018試合目の出場を果たし、プロ野球記録を更新したときは、結構感慨深いものがあった。

 いまでも覚えているのは2009年の開幕前、前記録保持者の野村克也氏に「おれを抜いてくれよ」と励まされた折のことだ。「頑張って抜かせていただきます!」と答えた谷繁の記録はこの時点で2309。「あと7シーズン、年間100試合以上やれば抜ける」と笑っていたが、本当に実現できるのか、当時の私は半信半疑だった。

 だが、谷繁は当時から大真面目に語っていた。

「ぼくはボロボロになるまでやります。去り際が大事とか、いい終わり方をするべきとか言われるけど、ユニホームを脱ぐことはいつでもできる。それより、新記録を達成するまでチームに必要とされる存在でいたい」

 このときには、一度は目指したメジャー移籍も「まったく考えてない」と強調した。「日本人はやっぱり日本のプロ野球で頑張るべき。ぼくだけじゃなく、みんながそうあるべきじゃないかな」と言い切っている。

「これはどこかで機会があれば言おうかと思っていたんですが、いまさら日本人がメジャーへ行くことにどんな意味があるのか。メジャーで成功を収めたと言えるのは野茂さん、イチローの2人だけでしょう。松井秀喜も巨人時代以上の成績は挙げていません。日本でもメジャーの内情が知れ渡ってる時代に、あえてアメリカで苦労することにそれほど意義があるとは思えないんですよね」

 しかし、そうした谷繁の思いとは裏腹に、現実にはその後もメジャーに挑む選手は後を絶たなかった。そのせいもあってか、通算出場試合の記録保持者の上位100人を見ると、現役はトップの谷繁を含めても15人だけ。あとは引退した選手ばかりである。17位には“浪人中”の中村紀洋(2267)がいるが、谷繁に次ぐ“現役2番目”の広島・新井(2042=3日現在)は100人中やっと43位なのだ。

 野村氏が3017試合を最後に引退したのは1980年で、谷繁が更新するまでに35年もかかった。ただでさえ持続が難しい記録である上に、今後も力のある選手ほどメジャーを目指す傾向が変わることはあるまい。

 そう思うと、「日本人は日本で頑張ろう」という谷繁の言葉、6年前よりも重みをもって響く。