夏の高校野球、神奈川大会は27日、準決勝の横浜―桐光学園戦(横浜スタジアム)が行われ、延長10回に横浜が4―3のサヨナラ勝ちを収め、決勝へ駒を進めた。

 今夏で監督を勇退する渡辺元智監督(70)は劇的な勝利に「感無量。先輩たちが残してきた伝統は消えてない。こういう野球が継承できてよかった」と安堵した。

 甲子園出場27回、歴代3位タイとなる甲子園通算51勝を誇る名将だが、二人三脚で歩んできた小倉清一郎コーチ(71)が昨夏退任。小倉氏が抜けた今年、横浜はノーシードでの出場となった。渡辺監督が「ベスト4も厳しい」と語っていたチームが甲子園まであと1勝というところまで来た。この快進撃の裏には「小倉ノート」を受け継いだある選手の存在があった。

 相手校を徹底的に分析した「小倉ノート」は桐光学園・松井裕樹(現楽天)の攻略などでも知られる。今後の“偵察”に支障があり名前は明かせないが、現3年のその選手は2年生のときに渡辺監督からデータマンを勧められた。「チームの力になれてるのでうれしい。小倉コーチは本当にすごくて、見てるところが全然違う。毎日収穫がありました」

 試合前、コーチ陣が集まる会議で対策を進言する。4回戦の相模原、準々決勝の横浜隼人とシード高は完璧に分析。その精度には渡辺監督も「21人目の戦力」と称賛を惜しまない。同校関係者は「横高歴代選手のなかでも一番野球を知っている」と舌を巻いた。

 将来はプロ野球の審判を目指す。「進路相談で監督に『やってみたらどうだ』と言われて」

 28日の決勝は東海大相模とぶつかる。小倉ノートを受け継いだ「21人目の戦力」が、渡辺監督を最後の甲子園に導く。