シ烈な首位争いを演じる阪神がV奪回の“陰のキーマン”に何と元虎戦士で四国アイランドリーグplus・高知の藤川球児投手(35)を指名している。5月末に一度、入団オファーを断られており、今季中の戦力としての話ではない。シーズンの正念場を迎える藤浪ら若手投手陣への「指南役」を勝手にお願いしているのだ…。

 事の発端は藤川が本紙インタビューで明かした「今でも阪神のことは気にしているし、応援している。お世話になった球団だし、勝ってほしい」という“タイガース愛発言”だった(7月14日付)。今季中の藤川獲得はオファーを出しながらも、条件面の低さに加え、球団の熱意も伝わらず、失敗に終わった阪神だが、この発言を受け、藤川と親しいあるフロント幹部がこう言いだした。

「うれしい話じゃないか。それなら、これからの夏場、投手陣にへばりも出るだろうから、球児なりのアドバイスを送ってくれれば…。何度も修羅場を経験しているし、今の若い投手は憧れているヤツも多い。中西(投手コーチ)とも同郷で関係は悪くない。別に球場でなくてもいい。電話でも何でも連絡して、奮い立たせてくれたら十分だ」

“火の玉ストレート″を武器に阪神で通算220セーブを記録、2005年の優勝にも大貢献し、その後、投手のキャプテン役まで務めていた藤川。メジャーでは故障もあって結果を残せなかったが、酸いも甘いも知り尽くした、そんな男の「金言」はこれからの時期、投手陣が勉強になるのは確実。

 エースに成長した藤浪も藤川がメジャーから戦力外になった際に「人柄も含めてストレートの感触とか話を聞いてみたい」と発言。3年前の入団会見では「藤川さんのような本物の直球を投げる投手になりたい」とも語っている。実際、別のフロント幹部などは交渉決裂後に「一度、球団にも顔を見せてくれ。皆、お前のことを気にかけているんだ」と直接、藤川に電話で連絡を取ったという。藤川の存在は今でも絶大なのだ。

 当の藤川は25日に行われる四国アイランドリーグplus北米遠征選抜戦(高知)の出場を調整中。すでに注目の今季中のNPB復帰については「相手があること。なかったら、ないでここ(高知)で投げ続ける」と話し、8月からの独立リーグ後半戦に参戦する予定だが、調整は高知、関西両方で行っており、虎投手陣に助言することは十分可能だ。ド厚かましい感じにも見える阪神の藤川への「指南役」のお願い。ある球団関係者は「ウチは来季を見据えて獲得調査を継続している。今回の交渉で生じたフロントとのしこりはともかく、球児はどこよりも阪神に愛着を感じている」というが、果たして藤川が応えてくれますかどうか。