広島のドラフト2位・薮田和樹投手(22=亜大)が1日の巨人戦(東京ドーム)でプロ初先発し、5回2失点の好投でプロ初勝利を挙げた。大学時代、公式戦での登板がわずか3試合という隠し玉だったが、この日はピンチでの強気の投球が光った。ルーキー離れの度胸を持つ薮田はチーム内で「アウトレイジ」と呼ばれているが、その理由とは…。

 人生初となる東京ドームのマウンドに上がった薮田は、最速151キロをマークした直球を主体とした投球で巨人打線に真っ向勝負を挑んだ。自らの失策などで招いた5回の一死満塁の局面でも阿部、亀井をともに直球でねじ伏せてピンチを脱出。その直後の攻撃で野手陣が一挙6得点の猛攻を見せて白星が転がり込んできた。

 巨人戦での初登板初勝利は黒田、斉藤、福井に次ぐ球団史上4人目の快挙。この日は“元祖カープ女子”でもある母・昌美さん(48)もスタンドから声援を送ったが、最高の親孝行となった。大学時代、故障に悩まされ試合に登板できなかった薮田は「いろんな人に支えられて今があるので本当に感謝している。思ったより緊張せず打者に向かっていくことができた」と喜びを口にした。

 そんなルーキー右腕は常に険しく、にらんでいるような表情からチーム内では「アウトレイジ」のニックネームが付けられている。「アウトレイジ」は2010年に公開された北野武監督のバイオレンス映画。この映画にインスピレーションを得た亜大の先輩でチームメートの岩見が命名したとのことだが、「アウトレイジ」と広島には“縁”もある。実は12年に公開された続編の「アウトレイジ ビヨンド」の構想段階で、北野監督がカープの男気右腕・黒田に出演の“ラブコール”を送っていたのだ。そんな呼び名について、当の本人は「悪そうな顔をしているということで付けられたんです。映画も見たことがある。実際、悪かったのは中学までで、今は悪くないです(笑い)」と苦笑いを浮かべる。

 ただ、一方で異色のあだ名を歓迎している部分もあるという。「マウンドでは弱みを見せてはいけない。イメージも大事になるのでそう言ってもらえるのは嫌ではないです」と「アウトレイジ」というニックネームを知った相手に少しでも威圧感を与えることができることをメリットと考えている。

 そんなルーキー右腕の度胸満点の投球を緒方監督も「ピンチのなかで内心はドキドキしていただろうが、オドオドしたところを見せなかった。臆することなく向かっていってくれた」と絶賛した。「内容を振り返れば修正点もあるのでしっかり修正して、また勝ちを積み重ねられるように頑張りたい」と気を引き締めた薮田。今後、さらに“アウトレイジ化”するのかも含め、マウンドでの表情にも注目だ。