四国ILの北米遠征は新たなビジネスの夜明け

2015年06月28日 10時00分

ボールダーズと対戦する四国アイランドリーグplus選抜チーム

 藤川球児投手(34)の高知入団で独立リーグの四国アイランドリーグplus(IL)が再び大注目されている。そのILの選抜チームが、米国とカナダの東部で活動する有力独立リーグ「キャンナムリーグ」の公式戦に6月12日(日本時間13日)から28日(同29日)までスポット参戦している。選手にとっては米国の野球を肌で感じることができる貴重な武者修行の場だが、ILはビジネスチャンスとも捉えている。

 四国アイランドリーグはNPBへ挑戦する若者の夢をかなえるチャンスの場として2004年に創設され、05年4月にリーグが開幕した。同年12月のドラフト会議の育成ドラフトでともに愛媛の中谷翼が広島に、西山道隆がソフトバンクに指名され入団。翌06年のドラフト会議では12年にパ・リーグ首位打者に輝いた高知の角中勝也がロッテに7位で指名された。13年のドラフト会議で中日から2位指名された香川の又吉克樹は1年目からセットアッパーとして活躍。毎年選手を送り込んでいる。

 また、独立リーグ全体でいえば、四国の藤川のように、メジャー通算2586安打、ロッテで活躍したフランコがルートインBCリーグの石川に監督兼選手として入団。近鉄や巨人などで通算464本塁打を放ったローズがBC富山で現役復帰するなど話題豊富だ。

 そのILが今回海を渡った。創設から運営に携わる事務局のCOO・小崎貴紀氏はこう説明する。

「今年からリーグを前期・後期短くして2か月間のインターバルを置くことにして、各球団の経費を小さくさせて経営の健全化を狙いました。ただし間隔が空くことでリーグをシュリンク(収縮)させることは避けたかった。それが北米遠征になりました」

 選抜チームは24日の時点で米国での10試合は3勝7敗、カナダでは1勝2敗と苦戦している。理事で法務部長の坂口裕昭氏は「勝つために実力上位の選手を選んできました。北米遠征をする上で、ただエキシビション(親善試合)で来るのではなく、公式戦に組み入れてもらったことに意義があるわけで、ある程度勝たないと来年以降ないと思います」と結果と内容にこだわる。

 今回の遠征の目的は、試合をするためだけではないからだ。坂口氏は「日本の野球界はそれぞれいろいろな既得権益のようなもので固定されているところがあると思います。僕らはそれがないので自由な発想でリスクをとってチームを北米に連れてきて公式戦をすることで、世界の野球マーケットの中で、単純な選手だけのやりとりじゃない国際貢献をしていきたいです」と明かす。

 この方針をビジネスに発展させたいと坂口氏は語る。「(日米)双方にとってビジネスとして成り立つ可能性は十分にあるでしょう。そうしていかなきゃいけない」

 どういうことか。坂口氏は「今回の遠征で僕らの選手を売り込むこともできますし、彼らの中で日本でやりたいという選手がいたら球団同士で話して条件さえ合えば連れて帰って、その上でオフにNPBに橋渡しできる可能性もあるわけです」と力を込めた。

 今年2月にBC群馬のカラバイヨがオリックス入り。開幕後も5月にBC新潟のデニングがヤクルト、6月はBC石川のペレスが阪神、BC群馬のチャベスがオリックスと相次いで契約した。外国人選手の供給源なのだ。

 独立リーグの外国人選手はNPB球団にとっては狙い目。選手の適性を確認するために米国などに移動するとそれなりの金額が必要になるが、日本国内であれば安く済む上に、すぐに対応できる。また、日本の野球を体験し理解していることは大きなアドバンテージ。推定年俸がペレス1000万円、チャベス500万円と格安なことも魅力だ。今後さらに存在感は高まるだろう。

 もちろん選手を単に“供給”するだけではない。ILにも金銭面のメリットはある。日本人、外国人に限らず所属選手がNPB球団に入団した場合、金額や割合は未公表だが選手が球団から受け取る契約金と初年度年俸の一部をILの所属球団は受け取ることができる。日本で活躍できそうな外国人選手を発掘することができれば、ビジネスになるのだ。

 キャンナムリーグ側も同様のメリットを感じているようだ。なぜなら、同リーグに参加するには参加費が求められるが、今回は無料。有望な市場と捉えている。

 米国でも素質がありながらスカウトの目に留まらないケースは少なくないだろう。そんな選手がILで素質を開花させてNPB球団入り、さらにはMLB球団も…。ILは昨年10~11月に米国のサンディエゴとフロリダでトライアウトを実施、7人が合格し4人入団した。今後は未定だが行う可能性はありそうだ。ILの選手が米国で同じステップを踏んでMLB球団に入団する可能性もある。“四国ドリーム”の第2章が始まった。

☆…キャンナムリーグは2004年に創設された米国ニューヨーク州近郊とカナダにまたがるプロ野球の独立リーグ。15年は6球団が参加。レベルはマイナーリーグの2A程度。これまで10人を超えるメジャーリーガーが誕生し、レッドソックスの救援左腕・ブレスロー、ブルージェイズの内野手・コラベロ、救援右腕・デラバー、フィリーズの救援右腕・ガルシアが現役で活躍している。戦前のカナダに実在した野球チームを取り上げて、昨年末に公開された映画「バンクーバーの朝日」の影響で今年は日系人らを中心に観客が増えているという。