嵐の前触れということか――。巨人は10日、矢野謙次外野手(34)、須永英輝投手(29)と、日本ハム・矢貫俊之投手(31)、北篤外野手(26)の2対2トレード合意を発表した。だが球団内を探ってみると、今回の動きはフロント主導改革の第一歩にすぎないとのこと。盟主の内部で今、何が起きているのか。

 交流戦真っただ中に断行されたトレードに、現場は騒然となった。札幌入りしていた堤GMは、この日朝帰京し、球団事務所で矢野、須永に自ら経緯を説明。夕方に札幌ドームへ戻り、待ち構えた報道陣に対応した。

 日本ハム出戻りの須永はともかく、巨人ひと筋13年目になる矢野の放出には、ショックを受けた関係者も少なくなかった。同GMは「日本ハムさんは右(の外野手)を補強したいと。矢野選手でと指名を受け、検討した」と語ったが、移籍してでも出場機会を得たいという本人の意思を受け、以前から話し合いを重ねた上での決断だった。

 一方、今回獲得した2選手について堤GMは「矢貫選手に関しては、これから夏場を迎えて先発がバテてくることも考え、真ん中の中継ぎを厚めにしたいと考えた。北選手はまだ26歳。左打者の中で競い合って、一軍枠を自分の手でつかんでくれれば」と期待した。

 球団にとって、チームの“高齢化対策”は差し迫った課題だ。阿部や村田ら主軸の衰えが目立ってきた中、次世代の選手はなかなか伸びていない現状がある。今回のトレードについて、球団幹部は「矢野を出し、若い北を獲得したことに意味がある」とし「フロントの仕事は、数年先を見据えたチームづくり。それがここ数年、やや停滞していた。選手構成はまだアンバランス。良い話があれば、“次”もある」とトレード第2弾の可能性も否定しなかった。

 これまでトレードに消極的だった巨人が「変わった」という印象が広がれば、今後は疎遠だった他球団からの売り込みが殺到することも考えられる。現時点で進んでいる具体的な話はないが、7月末のトレード期限まで時間はまだ十分ある。

 またこの日、選手の一人は「ファームには『他球団で勝負したい』と口にしている選手が結構いますからね。これから堤さんにトレードを志願する選手が出てくるんじゃないか」と話した。

 そして改革の動きは、トレードだけでは終わらない。本当の嵐がやってきそうなのは秋だ。矢野や須永は他球団への移籍話がまとまったからいいが、フロントは今オフ、大胆な人員整理を断行するとの話もある。

 チームは現状なんとか首位に立っているが、V逸ともなれば大ごとだ。球団内では「今年はドラフト指名人数を増やそうという声もある。FA動向にもよるが、肩叩きされる選手は相当数に上るのでは」とささやかれている。

 前出の幹部は「今年のキャンプ前、原監督は『チームを一度解体してつくり直す』と宣言した。我々がこれから取り掛からなくてはならない仕事も同じ」と決意は固い。いよいよ動きだしたフロント主導の球団改革。巨人が内部から大きく変わろうとしている。