巨人の大黒柱に笑顔は戻るのか――。原辰徳監督(56)は8日、首痛を再発症して登録抹消された阿部慎之助内野手(36)について、順調であれば交流戦終了後に一軍合流させる考えを示した。しかし今、チーム内で不安視されているのは、首の故障より、むしろ“心の傷”。満身創痍の体で戦い続けてきた元主将の気力低下が心配されている。

 無念の再離脱から一夜明けた8日、阿部はジャイアンツ球場には終日姿を見せなかった。一方、支柱を欠いたチームは夕方、9日からの日本ハム戦へ向け札幌へ移動した。

 ソフトバンクに本拠地で屈辱的な3タテを食らった上に阿部がリタイアしたとあって、空港に現れたナインの表情は晴れない。「慎ちゃん(阿部)が心配だな」と切り出した原監督の声も、普段よりトーンが低かった。「今回は結構、自分の中でショックだと思う。新聞でだって『(登録抹消は)何回目』みたいに書かれれば、本人だってつらいだろう」と心中を思いやった。

 復帰時期については明確に決めていないというが「交流戦明けは、よみうりランド(ジャイアンツ球場)の練習から始まる。そのときに、状況いかんでは(一軍に)合流しようということは伝えました」と、阿部本人と交わしたやりとりの一部を明かした。

 阿部が今回再発させたのは、アスリートにとっては致命傷ともいえる頸椎ヘルニア。昨季は一時ベッドから起き上がれないほど、症状が悪化したこともある。それでもトレーナーによれば「休養を十分取れば、症状が劇的に良くなることもある」という。オフの期間、ケアに努めたことで、今季は捕手復帰を果たせるまでに回復した…はずだった。本人もショックは大きかったようで、先輩ナインによれば「明るい慎之助があそこまで落ち込んでいるのは初めて見た。声をかけられなかった」という。

 原監督を含めた周囲がこれまで以上に阿部を心配するのも、本人がただならぬ雰囲気を発していたからだろう。親しいチーム関係者も「今までも野球を続けているのが奇跡みたいな体だったけどね。これで心がポッキリ折れなければいいんだけど…」と表情は暗い。

 チーム内では復帰後の起用法について、一塁再挑戦や代打専念など、すでに様々な意見が浮上している。だが、それ以前に重要なのは、背番号10の心に負った傷が癒えるかどうか、だ。