ソフトバンクの松坂大輔投手(34)が12日、右肩の筋疲労による離脱後初となる、捕手を座らせてのブルペン投球を行った。遅まきながらもペースアップで実戦復帰も見えてきたが、そんな平成の怪物にとって大きな壁となりそうなのが、すでに軌道に乗っている「工藤方針」だという。

 1試合も投げずにリハビリ調整となっていた松坂が、ようやく本格的に動きだした。この日は、およそ1か月半ぶりに捕手を座らせてブルペンで49球。立ち投げやキャッチボールを含めると200球にも及ぶ投げ込みで「良かったと思います。とにかく早くゲームで投げたい。その準備は順調にできていると思います」。まずは二、三軍戦での実戦復帰に意欲を見せた。

 となれば、次は9年ぶりとなる日本での一軍公式戦マウンドだ。しかし、チーム内では、その道のりは決して楽なものではないとみられている。

「松坂といえど、下(二軍)でしっかりしたものを見せない限り、工藤監督は上げないだろう。(一軍で)1回も投げさせないというわけにはいかないが、方針というものがある。故障して出遅れてしまった以上はね」(チーム関係者)

 今季、新任の工藤監督が徹底しているのが、若手の育成方針と、ベテラン優先権の撤廃だ。先々を見据え、無名の若手をどんどん起用していく采配が軌道に乗りつつあり、現に主力でも一度故障した場合は、昨季までの秋山監督の「試合に出場できる状態」=「一軍OK」から「ファームでしっかりしたものを見せること」に変わってきている。現在でこそ一軍に上がったものの、昨季のホールド王・五十嵐も二軍待機が続いたし、いよいよ二軍で実戦復帰する正捕手・細川にしても、無条件では上げない方針。それは松坂といえども例外はないという。

 先発投手でいえば、ファームから上がってきたのは寺原一人だけ。その寺原にしても、12日現在でチーム防御率1・45を誇る二軍投手陣の中でも抜きんでた成績(防御率1・02)を残していたことに加えて、ローテに空きができたから昇格できたにほかならない。

 球団フロントも「松坂といっても、こちらから起用について要望することは一切ない。工藤監督に任せる」。どうやら一軍復帰には、まだまだ時間がかかりそうだ。