<大下剛史 熱血球論>広島が3カードを終えて2勝7敗と苦しい戦いを強いられている。開幕前から打線で苦労するのは分かっていたことで、評論家陣の評価が高かった理由は先発投手陣の充実という点からだった。しかし、ふたを開けてみれば先発陣で白星を挙げたのは黒田とジョンソンだけ。若手陣が壊滅的状況なのが今の位置にいる要因だろう。

 なかでも気掛かりなのが大瀬良だ。3月31日のDeNA戦(横浜)では初回に満塁アーチを浴びて劣勢に立たされる展開。もう1点も与えられない絶体絶命の状況なのに、なぜかマウンド上でニコニコと笑顔を見せていた。無論本人は投球に集中していたはずだが、これでは「絶対に抑えてやる」という気概が感じられないと見られても仕方がない。三塁を守っていた選手会長の梵がマウンドに駆け寄った場面があったが、その点を注意したのだろう。それから顔つきがガラリと変わり、戦う選手の目になっていた。

 梵がそうした行動を取るほど野手も感じるものがあったということだ。野手は投手の一挙手一投足に注目し、緊張の糸を張りながら守備に就いている。後ろで守っている仲間を不安にさせるようでは「勝てる投手」にはなれない。

 大瀬良には黒田という格好のお手本がいる。黒田はマウンドで静かに闘争心を燃やし、どんな場面でも一喜一憂せずに投げ抜く。そんな姿勢は野手にも勇気を与えるものだ。メジャー仕込みのツーシームを直接伝授されたようだが、黒田のそうした姿こそ見習ってほしい。

 プロ野球界では「2年目のジンクス」というものが存在する。昨年、新人王を獲得した大瀬良も今年が本当の力が試される年といっていい。マウンド上での態度やしぐさを含めて進境を見せられるか。それが今後の広島の戦いを占う一つの鍵になるといっても過言ではない。7日から本拠地での大事な巨人3連戦が控えており、その初戦の先発を託されたのが大瀬良だ。どれだけ変わり身を見せられるか。注目の一戦になる。(本紙専属評論家)