広島・黒田博樹投手(40)が15日のオリックス戦(マツダスタジアム)に登板し6回5安打2失点の内容。対外試合2度目の登板で初被弾を喫したものの、黒田の投球を本紙評論家の前田幸長氏も絶賛。本調子とはいかない中でも、きっちりとゲームメークする力は他球団もお手上げだと分析した。

【前田幸長 直球勝負】黒田を相手にしたオリックス打線は「攻め切れない」とフラストレーションがたまりっ放しだったはずだ。要所で執拗に繰り出されるインコース攻めに苦戦し、ヤマを張って打ちにいっても“動くボール”によってファウル、もしくは凡打に仕留められる。ツーシーム系の球速は140キロ台前半で、打席に立っても「速い」という印象はそれほど持たなかっただろう。しかしながら、抜群のコントロールと微妙な変化でバットに当ててもタイミングを狂わされ、揚げ句に芯を外される。左右関係なく多くの打者が「何で打てないのか」と自問自答していたに違いない。

 この日の黒田は6回を投げて5安打1四球2失点。2度目の実戦登板で初めて安打と四球を与え、4回にはブランコに初球をとらえられてライナー性の本塁打も浴びた。このブランコへ投じた初球はツーシームが甘く真ん中に入った失投。だがいくら黒田といえども人間だ。こういうふうに打たれる時はあるし、甘いコースへ入ってしまうことだって当然ある。

 とはいえ“さすが”と感じさせたのは走者を背負っても、あるいはブランコの2ランを食らって失点しても大崩れせずに自分のリズムを保ちながら落ち着いて淡々と投げ続けたマウンドでのたたずまいだ。セットポジションになっても、テンポの良さは走者のいない時と同様にほとんど変化がなかった。

 6回には前の打席で痛打されたブランコを初球から2球連続で得意のインコース攻めによって簡単に追い込み、2ボール2ストライクからの5球目で外へ落ちるスプリットを投じて空振り三振を奪った。ここで並の投手ならば嫌なイメージを持ってペースを崩しがちになるところだが、この辺りの気持ちの強さこそが黒田の黒田たるゆえんなのだろう。やはりメジャーの厳しい戦いで培った修正能力、そして精神力もズバ抜けている。

 ネット裏でメモを取っていた他球団スコアラー陣は、前回登板より調子が悪いながらも6回2失点のクオリティースタートで試合をまとめた黒田に「お手上げ」の印象をさらに強めたはずである。(本紙評論家)