昨オフに中日を戦力外となり、巨人と育成契約を結んだ堂上剛裕外野手(29)が18日、韓国・サムスンとの練習試合(那覇)に「5番・一塁」で先発出場し、推定130メートル弾を含む2安打3打点と大暴れ。支配下登録へ猛アピールした。地獄を味わった堂上は昨秋から周囲も驚くほどのストイックな姿勢で練習に打ち込み、チャンスをうかがってきた。本紙記者にも“臨時打撃コーチ”を緊急依頼してきたことまであった――。

 血のにじむような努力が生んだ一発だった。3点リードで迎えた7回の第4打席。一死二塁から138キロの直球を強振すると、打球は高々と舞い上がり、左中間スタンドに飛び込んだ。

 第2打席に右翼フェンス直撃の適時二塁打を放っていた堂上は4打数2安打3打点の大暴れ。グータッチで出迎えた指揮官は「うちにいないタイプの打者だね。一番光っているんじゃないか。(長所は)やっぱりパワー。左のパワーという点で由伸、慎之助の後にああいうのはいなかった」と最大級の賛辞を送った。

 堂上は昨年、中日から戦力外通告を受けて育成契約で巨人に入団。好調の要因を「何とか入団できたので、どうにか戦力になりたいという強い気持ち」と話したが、それは日々の姿勢にも表れていた。

 昨秋からジャイアンツ球場で自主トレを行っていた堂上は、練習を終えるのは毎日が最後。あまりの熱心ぶりにナインは「中日の選手はよく練習すると聞いていたけど、どんだけ練習するんだ…」と目を丸くしていた。また、オフの間は選手が完全撤収する時間が定められていることもあり、当時の堂上は本紙に“ストイックすぎる悩み”を打ち明けたこともあった。

「ナゴヤドームは暗証番号を打ち込めばいつでも練習できたんですよ。係員もいない。変な話、夜の12時からでも。(巨人は)時間が決まっているので、そこがつらい…」

 さらに、誰もいなくなった室内練習場で「打撃フォームを2パターン試しているんですけど、どっちがスムーズか見てもらえますか?」と唐突に“打撃コーチ”を依頼してきたこともあった。それだけ生き残りに必死だったのだ。

 そんな努力が実を結んで、ひとつの結果を残した堂上は、指揮官からの褒め言葉に「本当ですか? やってきてよかったです」と一瞬だけ笑顔を見せると「でも、続けていくことが大事なので」と表情を引き締め、試合後は再びバットを振り込んだ。この勢いと真剣さがあれば、支配下登録どころかリーグ4連覇に欠かせない戦力となることだって夢ではない。