日本ハム・大谷翔平投手(20)が17日、韓国・KIAとの練習試合(名護)で3回を無安打無失点6奪三振と好投した。この日はワインドアップを“封印”したおかげか、制球も安定。ネット裏の他球団スコアラーからは「ワインド不要論」も飛び出したが、そんな論調に首脳陣は反論。黒木投手コーチが明かした「大谷式ワインドアップ」の本当の狙いとは――。

 球速よりも速く見える最速154キロのストレートがアウトローにビタビタと決まり、効果的に交ぜられるカーブ、スライダー、フォークにKIA打線は手も足も出なかった。

「やっぱりすごいね。(外角低めに投げ切る)原点能力が高いし球持ちもいい。ストレートに強い韓国の打者がそのストレートで空振りしていた。これで未完成な印象を受けるんだから、今後の伸びしろを考えてもダルビッシュよりもすごい投手になる」と絶賛したのは、かつて野村ID野球の名参謀だったヤクルト・松井編成部長だ。

 大谷に関しては常に厳しい栗山監督も「内容は別にして、いい顔をしていた。ゲーム形式の中で相手をやっつけてやるという気持ちが今日はあった」と褒めざるを得ない圧巻の内容だった。

 ワインドアップも含めた前回9日の紅白戦では制球を乱したが、この日は全球セットポジションからの投球で「スピードよりも今日は球の質がよかった。比較的いい精度のボールが行ったと思う」(大谷)と38球のうち28球がストライクと制球が安定した。

 そんなこともあり、ネット裏の他球団スコアラーからは「そもそもセットポジションから162キロを投げられるんだから球速は十分。あとはその精度を上げればいいわけでワインドアップなんて必要ないのでは」という声も出たが…。日本ハム首脳陣はこう反論した。

 黒木投手コーチは「そもそも世間に誤解されているのは翔平が165キロとか170キロとか、去年以上の球速を出すためにワインドアップに取り組んでいると解釈されていること。本人が果たして本当にその目的のためにワインドをしているのかというとボクは違うと思う」とクギを刺し、こう解説した。

「今は本人が自分で考えて取り組んでいることだから見ているだけですけど、本来の目的は投球の引き出しを増やすことにあるんだと思う。例えば地方球場やQVCマリンのような屋外球場で強風に吹かれてセットポジションのバランスがどうしても取れないような時の対応策。年に数回はあるどうにも修正の利かない試合の中でプレートを踏む位置を変えてみるとかと同じオプションですよ。そのためにまずはセットポジションでの投球を確実にしておく必要がある。その上でワインドアップは試合の中でもっとやるべき。その割合がまだ少ないと思う」

 大谷は「(ワインドアップを)見極める時期とかは考えていない。練習では両方投げていきますしゲームで投げるかどうかだけ」と場外の論争などどこ吹く風。見ている景色はやはり凡人とは違うところにあるようだ。