二軍でリハビリ中の巨人・長野久義外野手(30)が13日、右ヒザと右ヒジの手術後、初めての屋外フリー打撃で特大弾を連発した。川相ヘッドコーチも視察に訪れたランチ特打で、91スイング中、12発の柵越えを披露。見学したドラフト1位ルーキー・岡本和真内野手(18=智弁学園)の目を点にさせた。そんな“絶好調”の長野を抱える二軍では今、ある不安が浮上している。

 故障明けでも、二軍ではやはり別格か。屋外でのフリー打撃は手術後初。最初こそ感触を確かめるようにスイングしていた長野だったが、徐々に力を込めると、打球は次々とフェンスを越えていった。

 計91スイングで12発の柵越え。両翼92メートルの狭いひむかスタジアムとはいえ、左翼スタンド後方の防球ネットを余裕で越えていく場外弾が6発もあった。ケージ裏で見学したルーキーの岡本は「全部がすごかった」と感激しきりだったが、本人は「今日は外で打てたことが収穫。(柵越え連発は)狭かったですから」と涼しい顔だった。

 練習後は恒例のサイン会を開催し、この日も大勢のファンを集め、存在感は二軍で際立っている。長野は「僕よりも、岡本君の打撃を見た方がお手本になりますよ~」と話したが、若手にとってこれほどの生きた教材はない。一挙手一投足にヤングGの熱い視線が注がれている。

 二軍首脳陣も「チョーさんは華があるからね。彼がいてくれるおかげで、今年はファームの雰囲気が明るい。若手も生き生きしているし、とても助かっている」と長野の存在が有形無形の好影響をもたらしていると話す。

 しかし、その存在の大きさが、逆に不安にもつながっている。この日は長野のフリー打撃をチェックするため、一軍から川相ヘッドコーチが駆けつけた。その姿を見つけた二軍関係者は表情を険しくして「まさか、沖縄へ連れていこうとしているんじゃ…」とポツリ。長野が予想以上に順調な回復を見せていることで、沖縄・那覇で16日から行われる一軍の2次キャンプに連れていかれるのではと勘繰っているのだ。

 もちろんチームにとって長野の一軍復帰は一日でも早い方がいいに決まっている。だが、長野の存在が二軍の若手に想像以上の好影響をもたらしている現状もあり、一軍に戻ってしまうことに複雑な思いを抱いている関係者が多いわけだ。

 では、川相ヘッドコーチは一軍昇格のタイミングをチェックするために現れたのか。同ヘッドは「長野の沖縄行き? それはないでしょう。もちろん最後まで宮崎になるでしょう」と否定し「(一軍への)合流は東京に戻ってからだと思いますよ」と当初の予定通り、二軍でリハビリに専念させる方針を強調した。

 報告を受けて「だいぶ良さそうだね」と話した原監督も、現時点で長野の一軍昇格を早める考えはなさそうだが…。今や“ファームの星”となった長野を巡り、チーム内では微妙な綱引きが行われている。