楽天の2年目左腕・松井裕樹(19)が、大化けの予感を漂わせている。環境に慣れたことや以前から面識のあったドラフト1位・安楽智大投手(18=済美)がチームに加わったこともプラスに働いているのだろうが、のびのびと野球に打ち込めているのはそれだけが理由ではないようだ。中学時代の恩師である横浜青葉緑東シニアの中丸敬治監督が明かす。

「本人と話をしたら、去年は味方のベンチばかり気になっていたと言っていました。監督の目が怖かったそうです」

 昨年、楽天で指揮を執っていたのは星野仙一氏(68=現シニアアドバイザー)。言わずと知れた闘将だ。116イニングで67四球、8死球、6暴投と制球難に苦しみ4勝8敗に終わった原因が全て星野前監督にあるとは思えないが、ベテラン選手でもビビってしまう闘将のオーラや目力がプレッシャーになっていたとしても不思議ではない。

 その点、今季から一軍を預かる大久保監督は、二軍監督として親身に指導してもらった恩義もある。今キャンプでも、指揮官が直々に「ちゃんと教育するように」と安楽の教育係に指名するなど、関係も良好だ。そんな落ち着いた精神状態にあるからこそ、1年目に出し切れなかった能力を発揮できるようになったというわけだ。

 久米島キャンプ最終日の12日、松井裕は今季初実戦となる紅白戦で8回から2イニングを投げ、1安打1四球2奪三振無失点とまずまずの投球を披露。手応えを感じた大久保監督は「松井裕は中6日ではもったいない。(抑え候補の)青山、ミコライオの出来次第だけど適性を見ていきたい」と、勝利の方程式に組み込む考えまで明かした。松井裕自身は「(起用法は)自分が決めることではないので、チームのために力になれれば」と戸惑いも見せたが、可能性が膨らんでいることは確かだ。