巨人のドラフト1位ルーキー・岡本和真内野手(18=智弁学園)のキャンプデビューは、ほろ苦い一日となった。初日から原辰徳監督(56)が視線を送るなかでのフリー打撃の結果は、空振りありの柵越えゼロ。それでも“ゴジラの再来”を期待する指揮官や球団サイドの期待の高さは変わらず、早期の一軍昇格プランが描かれている。

 青島神社での全員参拝を終え、午前10時から練習を開始。原監督は初日から精力的に動いた。サンマリンスタジアムでナインの状態を確認した後は、正午すぎから投手陣のブルペン投球を視察。そして最後は初日では珍しく、二軍のメーン球場・ひむかスタジアムに足を伸ばした。

 目的はただひとつ、岡本の屋外初フリー打撃を自らの目でチェックするため。侍ジャパンの小久保監督と並んでケージ裏から、背番号38に熱視線を送る。だがこれが岡本には重圧となったようで、結果は42スイング中、柵越えはゼロ。さらに空振り2回のおまけまでついた。

「緊張して力んでしまった」と苦笑いを浮かべた岡本。原監督からは優しく「しっかり食べて、寝て、大きくなれ」と声をかけられたことを明かし「体力的、筋力的、技術的にまだ一軍選手に及ばない。レベルアップしていきたい」と意気込みを語った。

 そんな初々しいルーキーについて、原監督は「原石としては素晴らしい。今日は彼がどんなスタートを切るかを見たかった」と語ったが、異例の初日視察を行った理由は、はやる心を抑え切れなかったからだろう。

 二軍スタートこそ納得して決断したが、岡本は原監督自身がほれ込んで1位指名を決めた逸材。この日は「理想と現実というのがある」と全体の感想を語ったが、岡本に関してはできるだけ早く一軍へ上げて育てたいという考えを持っている。

“柵越えゼロ”の結果は、意外だったかもしれないが、それでも早期一軍プランに変更はない。早ければ第2クール中にも一軍練習に参加、11日にも行われる一軍紅白戦への出場が検討されている。

 原監督が岡本の早期一軍昇格にこだわる理由は、ただ手元に置きたいという理由からではない。かつてあの松井秀喜氏も、1年目のキャンプではフリー打撃で特大弾を連発しながら、オープン戦では石井一久(当時ヤクルト)のカーブに腰を引いて見逃し三振。プロのレベルに驚いた。同じく大砲候補と期待される岡本にも“一軍の壁”に早めにぶち当たってほしいという思いがあるからだ。

 もちろん球団としての苦しい事情もある。この日は松坂&工藤新監督効果に沸くソフトバンクと、宮崎で初めてキャンプをスタートしたオリックスに押されてか、サンマリンスタジアムのスタンドは寂しかった。

 3日に松井氏が視察に訪れることが決定したのは救いだが、話題の少ない巨人はなんとか岡本を大きく売り出し、集客につなげたいという思いもある。

 この日の青島神社での参拝後には、絵馬に「ケガせず一年、すべてでレベルアップ」と力強い字で記した岡本。現場と球団、双方の高い期待を背負ってプロ1年目のキャンプがいよいよスタートした。