マーリンズと1年200万ドル(約2億3600万円)で契約したイチロー外野手(41)が29日に東京都内で入団会見を行い「選手として必要としてもらえること、これが僕にとって何より大切なもので大きな原動力となる」と新天地での活躍を誓った。会見には球団幹部3人がフロリダから駆けつけて同席。偉大な足跡を残した“レジェンド”イチローへの誠意を見せたが、わざわざ来日した目的はそれだけではない。見え隠れするのはスポンサー獲得を見据えた“営業戦略”だ。

 会見にはマーリンズのサムソン球団社長、ヒル編成本部長ら3人の球団幹部が同席した。偉大な足跡を残したレジェンドへの敬意と熱意を球団が示した格好で、これにはイチローも「ただただ恐縮している。マイアミからトータル18時間かけて来てくれた。このやたら熱い思いに応えたい。この2年間、欲していたのはこれだったんだな、と思う」と感謝しきりだ。

 しかし、球団の狙いはそれだけではないという。あるメジャー関係者は「日本で会見をやったのは日系企業へのアピールですよ。球団初の日本人選手でスーパースター。いろんな営業戦略があっての来日ですよ。マーリンズはメジャーで人気がないし、金もない。イチロー獲得で放送権料も入るだろうし、日本を大きなマーケットとして考えている。普通は向こう(フロリダ)で会見するんですから」と話す。

 マーリンズは昨季の観客動員がナ・リーグのワーストで、選手の年俸総額はメジャーワースト2位。2012年、13年と連続でナ・リーグ東地区最下位で、昨年も4位だった。日本でなじみの薄い“弱小球団”にとって、イチローの加入は日系企業を開拓し、ジャパニーズマネーを獲得できるチャンスというわけだ。

「フロリダにはディズニーワールドがある。観戦チケットとパックでツアーを組むことができるし、旅行会社にもアプローチしていくはずですよ。日系企業がスポンサーにつけば、球場のバックネット下“バーチャルポップ広告”なんか2~3億円で売れる。それこそ今回の幹部の渡航費、宿泊費なんてあっという間だし、イチローの年俸分もすぐにさばけますよ」(同)

 もっともイチローにはマーリンズのしたたかな計算は関係ない。実力で外野の一角をこじ開け、出場機会を増やすだけだ。41歳の新たな挑戦がスタートした。