メジャー初打席初本塁打で自分に「転ぶなよ…」

2015年02月01日 16時00分

元局アナ 青池奈津子「メジャー オフ通信」

 

【ジョン・ベーカー捕手】マイナー生活7年目。不遇続きだったジョン・ベーカーのもとへ、ついにチャンスが舞い込んできた。メジャー昇格の連絡をもらい、ホテルに戻ると部屋をシェアしていたチームメートのクリス・バーンウェルから「ビッグ・リーグへ行くんだろう? 顔に書いてある!」と早口で尋ねられた。

 

「よっぽど、明らかだったんだろうね(笑い)」

 

 懐かしそうに目を細めながら当時を振り返る。

 

「僕らは当時、家賃を抑えたくてアルバカーキ(ニューメキシコ州)の3LDKに男4人、妻ら3人と赤ん坊1人で共同生活をしていたんだ。家賃が150ドル(約1万5000円=当時)で済んだからね。遠征に行く時なんて、1つの大きなスーツケースを共同で使っていたんだ。でも、僕がメジャー昇格になってスーツケースを持って行かなきゃならないから、クリスはゴミ袋に全部自分の荷物を詰め直してさ…。2人でお祝いしてから、早朝のフライトのために早く寝ようとした。でも寝られやしない。知らせを聞きつけたチームメートたちが15分置きにお祝いを言いにドアをノックしにやってくるんだ。『おめでとう』『君の努力の成果だよ』ってね。ハグしながら、そんなふうに言ってくれた。あの夜は、とても特別な夜だった」

 

 眠れないまま翌日を迎え、マーリンズのいるサンディエゴへ――。

 

 メジャーに合流して2日目に早くも出場の機会がやってきた。そして、その翌試合。2008年7月10日のドジャース戦では初打席で“豪快な一発”を決める。

 

「チャン・ホー・パク(朴賛浩)とはマイナー時代から相性が良かったんだけど、ホームランだった。信じられなかった。それまでの長い道のりの出口とホームベースを回る道筋がつながっているような感覚が生まれて…。本気で『転ぶなよ、右足の次は左足だ』って、考えながらベースを回ったんだ」

 

 その日以来、ケガをするまでの2年間は正捕手としてほぼ毎試合に出場し続けたジョン。ここ数年は再びマイナーとメジャーを行き来する日々が続いているが、不安のない顔でこう続ける。

 

「野球選手は、短命なのが唯一のマイナス面だろうね。でも、僕は未来のことで悩んだことはない。何らかの仕事に就くぐらいの頭はあるはずだと…。そういうふうに自分を信じているのもあるけれど、人生はその瞬間をちゃんと生きるほうが楽しいって思うんだ」

 

 野球場には「人生の師」がいるとつくづく思う。今年はジョンのような生き方を見習いたい。

 

 =この項終わり=

 

 ☆ジョン・ベーカー 1981年1月20日生まれ。34歳。米カリフォルニア州アラメダ出身。185センチ、98キロ。右投げ左打ち。2002年にドラフト指名されたアスレチックスへ入団。07年3月にマーリンズへトレードされ、08年7月にメジャーデビュー。右ヒジを痛めて10年オフにトミー・ジョン手術を受けた。11年オフにパドレスへ移籍。ドジャース(マイナー)を経て14年はカブスとメジャー契約。和田がメジャー初勝利を挙げた7月28日のパドレス戦で先発マスク。翌29日のロッキーズ戦では延長16回に9番手で登板し、勝利投手になった。現在はFA。