巨人・原辰徳監督(56)が13日、千葉・勝浦の国際武道大で特別授業を行った。講義では「理想の打線」について語ったものの、最終的には「実力至上主義」とし、今季もオーダーを固められそうにない苦しい胸中をうかがわせた。今オフは補強などによる戦力の強化が思うようにいかず、打線を固めようにも固められそうにないのが現状。苦しい戦いを強いられそうだ。
国際武道大の客員教授を務める原監督が講義したのは「スポーツ戦略論Ⅱ」の授業で、質疑応答形式で進行した。概要は「さまざまな立場からスポーツの現状を検証し、トップレベルの戦いの様子に触れ、競技スポーツを多角的に捉える」というもの。話題は昨季100通り以上変更したG打線にも及んだ。
「打順を決めるのは試合の前日か当日か」の質問には「さまざまです。試合中に『明日はこの選手は使わない』と思っても(翌日)試合開始の30分くらい前に使おうと思うときもある」と回答したが「メンバーを変えることが(自分の)仕事ではない。このチームがベストの状態で戦うことが目的。昨年は『こんなはずではない、まだできるはずだ』という中でオーダーを変えた」と、その苦悩をのぞかせた。さらに「理想の打順はジグザグ。9番まで揃えることができれば、相手チームも投手交代が非常に嫌になる」「理想は右打者が4番に入ること」と持論も語ったが、最終的には「実力史上主義を守ればチームの秩序は保てる」「戦う集団である以上、違う目的を持つ人がいるならばそれはチームではない。自己犠牲、犠牲心があって、さらに個の力があれば勝つ」と総合力の重要性を説いた。
しかし、指揮官が「実力至上主義」を語るほどに見え隠れしてしまうのは、昨年とほとんど変わらないチーム力だ。攻撃面の補強では最大の目玉だったグリエルの争奪戦に敗れた(DeNAに残留)。「これだけでチームがガラッと変わる」(原監督)と語った阿部の一塁コンバートも、満身創痍の肉体、そして今年36歳という年齢からして飛躍的な打撃復活の保証はない。昨季、一時4番に据えた長野はヒジとヒザの手術で現在もリハビリ中だ。
さらに“今年こそ”の期待がかかる大田も「(今年は)だまされてみようかな」という状態で、ドラフト1位の岡本(智弁学園)もまだ高卒1年目のルーキーだ。補強でさしたる上積みがなく“ベテラン、主力の復調がカギ”という現状では、結局は昨季同様、打線をやりくりして戦っていくしかない。
リーグ優勝までに106通りの打順を組んだ昨季。シーズン終了後、球団トップと会談した際には「来年はその10分の1くらいになるようなチームを目指す」と語った指揮官だったが、今季も頭を悩ます日々が続きそうだ。