
阪神に指導者として復帰した“ハマちゃん”こと浜中治二軍打撃コーチ(36)が、若手大砲の育成に期待を寄せられている。現役時代、当時打撃コーチだった田淵幸一氏(現評論家)に「うねり打法」を伝授され大ブレーク。2003年のリーグ制覇にも貢献した。ところが代名詞ともなった打法の指導を「行うつもりはない!」という。その理由とは…。
本格的な指導者デビューとなる2月の春季キャンプに向けて浜中コーチは目下、鳴尾浜でその準備中だ。「今のうちに選手をしっかり見ておきたい」が一番の理由で、同時に「選手にバットを借りて隅っこで素振りしたり、走ったりしている。ロングティーとかをやるにしても『こうやるんだよ』というのをやって見せた方が伝わりやすいから」と“動けるコーチ”を目指している。
現役時代の浜中コーチは、02年から阪神の打撃コーチに就任した田淵氏直伝の「うねり打法」で大ブレーク。軸足を使って一気に回転する一般的な打ち方と比べ、うねり打法は体を下の方から順にねじり戻すようにインパクトを迎えるスピン打法だ。これで同年18本塁打を放って開花。03年には開幕4番を任され、シーズン中盤に故障離脱するまでチームをけん引。リーグ優勝に貢献した。
普通なら当然、その打法伝授に期待がかかるところだが、浜中コーチは「伝授することはない」と断言。「やっぱり大事なのは基本なんですよ。うねりはいわば打撃の部品にすぎない。基本をしっかりしないと意味がない。ぼくはその基本を指導したい」と拒否理由を明かした。
今でも田淵氏を恩師と慕っているだけに不可解だが、これには別の理由もあった。「実は最初から『うねり』と教えられても何か分からなかったんですよ。説明しろ、と言われてもとにかく難しいんで。結局、分からんままでした(笑い)」。なるほど、これでは若手に指導と言っても無理な話。基本を徹底して鍛え上げるしかないわけだ。
恵まれた才能を持ちながらもプロ生活の大半は故障に泣いた。06年に20本塁打を放って一度は復活を感じさせたが、それ以降成績は右肩下がり。ヤクルトに移籍した11年限りでユニホームを脱いだ。その悔しさを若手の大砲育成にぶつける。うねりはダメでも「2代目ハマちゃん」の誕生は期待できそうだ。