オリックスから国内FA宣言した金子千尋投手(31)が24日、残留を表明した。4年総額20億円プラス出来高払い、契約期間中のポスティングシステムによるメジャー挑戦も認められないという条件での決着だ。2年後のメジャー挑戦容認などオリックスを上回るスペシャルプラン提示の球団もあった中、金子が古巣を選択したのは…。その舞台裏に迫った。

 阪神、中日、楽天などが争奪戦を繰り広げた金子の去就はオリックス残留となった。11月11日に国内FA宣言、史上初めてポスティングシステムと国内FA権を併用するかと物議を醸し、米球界も注目したが、同24日に来季はメジャーに挑戦しないと表明。25日には古傷の右ヒジにメスを入れると明かし、29日には復帰まで約3か月を要する手術を受けるなど、決着までに紆余曲折があった。

 大阪市内で会見に臨んだ金子は「僕を入れてくれたオリックスでもありますし(首位と2厘差で2位の)今シーズンのこともあって、ここで優勝したいという気持ちが他のオファーよりも自分に強かったのかなと思います」と残留の理由について話した。今オフ、オリックスが米球界から中島、日本ハムからFAの小谷野、元DeNAのブランコ、元広島のバリントンと大型補強を敢行したことも「残ってやりたいと思った要因の一つ」という。

 メジャー挑戦の夢については「僕の気持ちの中に“いつかは”というのはあります」と話した金子だが、オリックスとは4年総額20億円プラス出来高払いで合意し、契約期間中のポスティングシステムを利用してのメジャー移籍を認める条項はなし。金子が次にFA権を取得するのは最短でも4年後。阪神は4年20億円のほかに「2年後、自由契約」のプランまで用意し、球界内ではポスティング容認派の球団は2年20億円、ポスティング否定派の球団は4年32億円ぐらいまで条件が上がるとの情報まであった中、金子は金銭面でも待遇面でも、むしろ条件が悪い方を選んだ形だ。

 これについて球界関係者はこんなことを話す。「金子の意中の球団は巨人。でも、その巨人が最後の最後まで動かなかった。それに代理人の動きから条件優先みたいに言われていたけど、金子自身はお金にはこだわっていなかった。現にソフトバンクが当初、一番の条件を出したのに断ったそうだ。ソフトバンクに行ってオリックスファンを敵に回すのも嫌だったみたい。最終的に中日、阪神の2球団が残ったと聞いているが、それなら大事にしてくれて無難な古巣のオリックスで、となったんじゃないかな」。金子の一番の望みはメジャー移籍でも、高額な条件でもなく巨人移籍。それがかなわなかったこともオリックス残留につながったというのだが…。

 今季16勝5敗、防御率1・98で最多勝、最優秀防御率のタイトルを獲得し、沢村賞、ゴールデングラブ賞、ベストナインと賞を総なめにしたMVP右腕の去就問題。「チームが決まって気持ち的にもすっきりしました」と金子は話したが、いずれにせよ悩みに悩んだ末の決断。これをプラスにするしかない。(金額は推定)