石井琢への思い空回り…野村4回KO

2012年08月30日 12時00分

 広島が投打でツバメに完敗だ。29日の試合には赤ヘルの黄金ルーキー・野村祐輔が先発。新人では12球団唯一となる2桁勝利に挑んだが、初回から制球が定まらず4回3失点KO。打線は何度もチャンスを作ったが、あと1本が出なかった。悲願のCS進出に広島ナインの意気は大いに上がっている。それがこの日は空回りに終わった。

 思い通りにならない苦しさか、マウンド上の野村の表情には焦りの色がありありだった。赤松の犠飛で広島が1点をリードした4回、宮本、武内の連続安打で無死一、二塁。ここで8番・中村を空振り三振にしとめ、続く投手の中沢が犠打で二死二、三塁。好調のミレッジには敬遠気味の四球で二死満塁。ここで迎えるはここ5試合16打数1安打の上田だった。

 本来ならば、持ち前のキレで勝負できるはずだったが、この日の野村ははキレがなかった。やや真ん中へ入った内角134キロのスライダーを右前に運ばれ逆転を許すと、続く田中浩にも左翼線適時二塁打であっという間に3失点。次の畠山にも四球を出すなど、自己修正することができなかった。

 攻撃面もイライラが募るものだった。3点を失った直後の5回の攻撃だ。菊池が右前打、さらには梵が右翼越えの二塁打で無死二、三塁の大チャンスを迎えたが、エルドレッド、堂林と期待の4、5番が空振り三振。迎も三ゴロとあっけなく終了した。

 チームは確実に上向いている。しかし、この日はその勢いが空回りした間は否めない。前日、28日の試合前、引退を表明した石井琢が「僕をCSに連れて行ってください」とチームにメッセージを送った。その後、前田健が「(引退を表明した)琢朗さんのためにもCSに行きましょう!」と声を上げた。試合前、梵は「(28日に)一発は打ちましたけど、僕にとってはそれはどうでもいい。とにかく今はチームが勝つことですよ」と静かに語れば、堂林も「最近、本塁打は出ていないが、今は進塁打、四球とつなげる打撃をしっかりすることが大事。それか結果的に(本塁打のような)当たりになってくれればいい」と目をギラつかせていた。

 勝つための“つなぎの意識”に全員が徹している。今季の巨人と同じ状況となっているが、いかんせん経験不足であり、若い。

「若くて勢いがあるのは強み。でも経験できていないのが弱みだ」石井琢が、前田健に語ったそのアドバイス通りの苦しみのなかにある。

 この日の敗戦で再び2.5差に縮まった。しかし、この苦しみを乗り越えなければいけない。弱さを強さに変えるために、今はもがき苦しむ時だ。