巨人とのユリエスキ・グリエル内野手(30)争奪戦に快勝したDeNAだが、なにもマネーゲームに勝ったというわけではない。高田繁GM(69)によれば「条件面だけなら(巨人とは)問題にならない。彼が『横浜でやりたい』というのが大きい。本人や家族の希望を(キューバ野球)連盟が聞いてくれた」というのが勝因。さらに言えば、シーズン中からグリエルのわがままをすべて受け入れたことが功を奏した格好だ。

 実際、初めて海外でプレーする助っ人のためにDeNAは最大限の努力をした。食事面では、その超偏食ぶりに対応するため、わざわざ球団スタッフがキューバ料理を学んで食事を提供。ベンチでパイナップルを食べることも容認するなど、ストレスを与えないようにした。

 7月に父ルルデス氏ら家族が来日すると毎日、球場に招待し、グリエルが気持ちよくプレーできるようサポートした。飛行機恐怖症にも理解を示し、過去最大級と言われた台風8号が接近していた際の7月の沖縄遠征を免除。脇腹痛が発症した際には二軍でゆっくり調整させた。今季は6月からの途中加入だったが、62試合に出場して打率3割5厘、11本塁打、30打点と活躍できたのは、そんな球団側の配慮とは無縁ではなかった。

 DeNAはオリックスから国内FA宣言した金子にも興味を示していたが、本腰を入れていたのはグリエルの方だった。高田GMが「ない袖は振れない。金子はこっちから降りることはないけど無理かな」と撤退を示唆したのも、グリエル争奪戦で“実弾”を使い切ってしまったからだろう。

 DeNAはさらに弟のユニエルキス・グリエル内野手(21)とも2年契約で基本合意。「遊撃手をメーンにやっている。今年、成長した選手。1年はファーム(二軍)で出てもらうのもいいと思う」(高田GM)と将来性に期待している。DeNAは来季以降もグリエル一家をまとめて面倒見ていく。