巨人がまさかの敗北を喫した。キューバに編成幹部を派遣して獲得を目指していたユリエスキ・グリエル内野手(30)が15日、年俸3億円プラス出来高の1年契約でDeNAに残留することが決定的となった。これまで狙った獲物はことごとく仕留めてきたが、今オフは大物を水面下で獲り逃がしてばかり。いったい盟主球団の内部で何が起きているのか――。

 簡単な交渉ではなかったが、巨人としてもそれなりに手応えがあったからこそ参戦したはずだった。

 当初はロッテに残留が決まったデスパイネにも触手を伸ばしたが、その後グリエル一本に狙いを集中。しかし「来日時期が開幕間際になる上、国際大会のため途中1か月ほど離脱すること」「弟も支配下で契約」など、キューバ側が示した“難条件”が障壁となり、最後は撤退を余儀なくされたという。

 ただしキューバ球界に詳しい関係者は、巨人の最大の敗因は“カネ”だったと明かす。「要はDeNAを圧倒するほどの好条件を提示できなかったということ」と指摘すると「昔の巨人であれば本当に欲しい選手には青天井でカネをつぎ込んだはず。今回はそこまで本気ではなかった、ということなんでしょう」と話して首をかしげた。

 実は今オフの巨人はグリエル以外にも2人の大物獲りを断念している。1人目はソフトバンク入りした松坂(前メッツ)。原監督に直接、本人から売り込みの電話があったが、ソフトバンクの提示した3年12億円という条件を前にして交渉は進展せず「話はなかったことになった」(球団関係者)という。

 3年14億円の好条件でオリックス入りした中島(前アスレチックス)も同様で、どこよりも早く調査に動きながら、結局は9月上旬に左手首を骨折したことを問題視。「けがのリスクがある選手に他球団のような大金は出せない」と争奪戦には参加しなかった。

 もちろん球団は、それぞれのケースを冷静に吟味して判断したのだろうが、それでも今オフの巨人が“カネ”の捻出に苦しんでいることは、原監督が「補強費に上限があるというのはおかしな話だよな」と不満を漏らしたことからもわかる。

 今オフはFAでベテランの相川、金城を獲得。新外国人投手2人も獲ったが、どれも目立った資金を投入したわけではない。「目玉にカネをつぎ込むためだろう」とささやかれていたが、そうこうしているうちにストーブリーグは閉幕間近だ。

 補強にカネを使わず勝つに越したことはない。だが“小粒補強”の結果、来季も日本一奪回に失敗すれば、球団上層部に責任追及の矢が向けられることは避けられない。(年俸は推定)